飯食うたん?
休憩時間、スマホを手に取った遥は、ふと気になって静が飲んでいた薬の名前を検索した。 シートに書かれていたのを一瞬見ただけだったが、遥はなぜか名前を正確に覚えていた。
静の泣き顔が脳裏をよぎって、不意に不安が押し寄せた。
「エビちゃんおる?」
無線機のスピーカーマイクを握って、遥が言った。
「伊勢原さん、海老名です」
「エビちゃん、飯食うたん?」
無線を通して聞こえてきた静の声は、いつもと変わらなかった。 「ごめん、ほんだけ」
「東雲さんがおったら怒られますよ?」
責めるような静の声を聞いて、遥は苦笑いをした。