最近は付いとる方がお得とかいうらしいやん
「静は結構ナンパとかされるん?」
静はやっぱり両手でカップを持っとった。かわいいなぁ。僕はほの子供っぽいしぐさが好きなんよ。
「そもそも徳島自体ナンパされるような街とちゃうけんなぁ」 僕は静の言葉を聞いてほっと胸をなでおろした。ここが徳島でよかった。
「とにかく、知らん人についていったらアカンよ、僕よりええ男でも」
「さっきの人たちはおいしいご飯おごってくれるって言うたよ」
静はストローに付いた生クリームを、小さな舌で舐めながら言うた。
「だー!アカン!ほういう連中はご飯の見返りを求めとうけん!」
僕は必死な顔をしとったんやと思う、静がキャハハと声を上げて笑うたけん。 当たり前やん!静みたいな美人を前にして、ご飯食べて終わりなわけないやん!
「見返りって何ぃ?」
静はストローで生クリームを突きながら、上目遣いに僕を見た。
「あ、あのな~!大人をからかわれん!」
公衆の面前で何を言わそうとしとんや。
静はというたら、喉に小鳥でも飼うとんかと言いたあなるような笑い声を立てとった。
「さっきも言うたけど、男やけん大丈夫やいうことないんやけんな。最近は付いとる方がお得とかいうらしいやん」
僕が言うと、静は笑いが止まらん様子で苦しそうに息をしよった。
ま、まぁ、YouTube情報やけん僕にはようわからんけど?
「何ぃ?遥も、僕が『付いとる』けんお得やと思とんの?」
ほう言うと、静は自分の言葉にウケて吹き出した。
「静は、静やけん好きなんや!」
ちょっと、あくまでちょっとだけ必死に僕が言うと、静はうっとりした顔で僕の顔を見つめた。
ちんこ付いとったって付いてなくたって、静は静やけん。ほんなん関係ないけん。
「安心してぇ、遥よりええ男なんてこの世におらんけん」
ほう言うて静は、頬を少し赤くして微笑んだ。
僕はというとなんか恥ずかしいて、黙って静の目を見ながらメルティなんとかを飲んどった。
わかっとうよ、静にとっては僕が最高の男なんやって。僕やって、そこにだけは自信を持っとうよ。
不意に、カップを握る僕の手に、静の白い手が重ねられた。
「僕は、付いとう遥が好きよ」
静が小声で言うたけん、僕は飲み物を吹き出しそうになった。
もーホンマ、静には敵わんわ。
僕は翻弄されっぱなしよ。ほんで、こうやって翻弄されるんがまた気持ちええんやけん手に負えんよ。