ナンパされとった
先に着いとったらしい静を見つけたけど、なんや見知らん若い男二人に絡まれとった。
「静!」
僕は名前を呼びながら静に駆け寄った。
もー誰よ、僕の大切な静に僕の許可なく話しかけよんは。
「遥ぁ!」
僕の顔を見ると、静は安心したような笑顔になって、僕の腕を取った。
「なんやったん?」
心配して僕が訊ねると、静は恥ずかしそうに「ナンパされとった」と答えた。 静は大きなキャスケットをかぶり、オーバーサイズのブルゾンを着て、細身のジーンズにショートブーツを履いとった。小柄で華奢な体格も、バランスのええ立ち姿も、静を男やと思わせはせんかった。何より顔がきれいすぎた。
「男やって言うたんやけど、男でもいいけんって言われた」
静は困ったように笑うとった。笑いごととちゃうけん。
「静は美人やけんなぁ、男でもええっちゅうやつもおるし、男やけんええっちゅうやつもおるやろなぁ」
僕が言うと、静は「こわぁ!」と僕の腕にしがみついた。
怖いんは僕のほうよ、もし静が悪い男に連れていかれてなんかされたらと思うたら、生きた心地がせんわ。
ほんな僕の気持ちを知る由もなく、静はぐいぐいと僕の腕を引いて歩きだした。
「ふーん、どんなん?」
静の答えを聞いて僕は頭を抱えた。
「呪文やないか……」
こういうところに歳の差を感じるんよな。悲しいけど僕、おっさんなんよ。