幸せな夢を見たことだけ、覚えとう
小さな寝息を立てて眠る静は、ホンマに天使みたいやった。 僕はサイドボードに置いてあったランタンからライトを取り出して、スイッチを入れてまた中に入れた。 キラキラした光が静の顔を照らした。
僕は静の頬をそっと指でなでた。
「遥ぁ……」
目を覚ました静が、頬に触れとった僕の手を握って笑うた。
「メリークリスマス、誕生日おめでとう」
静は寝起きのかすれた声でほう言うた。
「メリークリスマス。ありがとう、静」
僕は小声で、静に言うた。
「もうちょっと寝たい……」
「かんまんよ」
僕が髪をなでると、静は気持ちよさそうに笑うて、すぐにまた寝息を立て始めた。
きれいやな、かわいいな。
静がそばにおってくれたら、他にはなんにもいらん。
静が笑うてくれたら、ほんなに幸せなことはないわ。
静のためなら僕はなんにでもなれるし、なんでもできる。
静のために生きて、静のために死ぬよ。
僕は静の華奢な手を握って、浅い眠りについた。
幸せな夢を見たことだけ、覚えとう。