年寄りには理解できんのかな
「ほれ何?」
ハンカチに刺しゅうされた、猫の頭にししゃもの体がついたキャラクターを見て、遥は首を傾げた。
「ししゃもねこはししゃもねこッスよ」
「いやどういうことなん?」
さも当然のように和が言うが、遥はいまいち納得できていない様子だった。
「年寄りには理解できんのかな」
不思議そうに遥を見ながら和が言った。まったく悪気はない様子で、純粋に疑問に思っているようだった。
「キツぅ!東雲さんちょっとこっち」
遥が円を手招きし、ハンカチを見せた。
「これ何と思います?」
「猫……ですかね?」
「ししゃもねこっていうらしいんですけど」
遥に言われて、円はその辺に並べられていたししゃもねこのぬいぐるみを手に取った。
「ししゃもなんですか、猫なんですか」
自分と同じことを言う円を見て、遥はニヤニヤと笑っていた。
「和、なんとかゆうたれよ」
「ししゃもねこはししゃもねこッスよ」
遥に促されて、和は遥に言ったのと全く同じことを言った。
「どういうこと?」
先ほどの遥と和のやり取りをなぞるように、円が首を傾げた。
「それが理解できんかったらね、和がね」
自分が遥を年寄り扱いしたことを思い出して、和は大慌てで声を上げた。
そのやり取りを見ていた静は、楽しそうに笑っていた。
「おまえ!他人事やと思てからに!」
涙目で和が静に訴えたが、さすがの静もここに出せる助け舟は持ち合わせていなかった。