僕も幸せになってええの?
「遥」
隣で布団にもぐっとう静が、僕の名前を呼んだ。
静の部屋のベッドは二人で寝るには窮屈やって、僕たちはぴったりくっついとった。 静がほうしたいと言うたけん、電気を消して、カーテンを開けとった。
白い月明かりが僕たちを照らしとった。
「どした?」
僕は静の顔にかかった髪を指で払いながらほう返した。
「遥はなんでほんなに優しいん?」
静は僕の胸を指でなぞりながら言うた。いつも甘えるときにするしぐさやった。 「静のことが好きやけん」
僕は迷わずほう言うた。
特別優しいにしようつもりはなかった。ただ、僕がしたいことを静にしようだけやった。
「なんで僕なんかのことが好きなん?」
不思議そうに静が言うた。
なんでって、細かい理由はたくさんあって、話したらいくら時間があっても足りんけど、おっきい理由は一つだけや。
僕が静の白い頬を指の背でなでると、静は嬉しそうに笑うた。
おかえりなさいって出迎えてくれる優しさも、キャハハって笑うかわいさも、すぐに震えて泣き出す儚さすら何もかもが愛しいて、静がそばにおってくれるだけで僕は幸せになれるんや。 「僕も遥とおると幸せや」
ほう言うと、静は目を伏せてしもうた。
なんで静がほんな顔をするんか、僕にはわからんかった。
しばらくの時間が過ぎた。僕は静の髪をなでながら待った。
「僕も幸せになってええの?」
静はうるんだ目で僕を見上げて言うた。
「当たり前や」
僕は答えた。
「幸せになるんに遠慮なんかせんでええ」
僕が言うと、静は僕の胸に顔を埋めて泣いた。
僕とおって静が幸せになれるなら、僕はもう静を離さんよ。静は僕が幸せにする。