僕の手を離さんようにな
円に手を引かれて歩く和が訴えた。
「わかっとる。娘がうんこうんこ言うな」
円に言われて、和はわけがわからないという顔をした。
円が笑顔で言うと、和はいつものように顔を赤らめた。
「迷子になったらあかんけん、僕の手を離さんようにな」
「はわ!はい!」
今更円に手を握られていることに気がついたのか、手元を見て和が上ずった声を出した。
そんな和を見て、円は楽しそうに笑った。
「かわいいよ、和。めっちゃ似合うとる」
和に優しいまなざしを向けて、円が言う。
「しっ、東雲さんも、めっちゃかっこええッス」
「何を緊張しとん」
円は和の慌てようがおかしくて仕方がない様子だった。
「好きな人と手ぇ繋いだら緊張するでしょ普通!」
和の言い分を聞いて、円は声を上げて笑った。
慌てて取り繕おうとして言葉が出ずに、口をパクパクさせる和。
「ほな僕も緊張するわ」
和の手を握り直して、円が言った。