どっちがどっちなんスか?
「例えば、例えばの話ッスけど、伊勢原さんと東雲さんが付き合うてるとするやないですか」
昼、遥が休憩室で涼んでいると、そこに入ってきた和が話しかけてきた。 「例えばの話が怖すぎるんやけど」
遥が苦笑いした。
「ほしたら、伊勢原さんと東雲さん、どっちがどっちなんスか?」
和がそう言ったが、遥には意味が分からなかった。
「僕は僕で東雲さんは東雲さんやん」
「いやほうやなくてね、その、ほういうことになったときに、どっちがどっちなんかなぁって」 ごにょごにょと要領を得ない和に対して、遥は首をひねった。
「え?わからんスか?」
「わからんな」
「マジで?付き合うてたらするでしょ?」
和は遥の顔をのぞき込むようにして言った。
「わからんなぁ~、なにをするんや?」
そこまで言って、遥は「くっ」と吹き出した。
缶コーヒーを持つ手が小刻みに震えていた。
「あっ、おっさん!わかっとって俺に言わせようとしとるやん!エッロ!」
和が非難するように声を上げたが、遥は肩を震わせて笑っていた。
「和おまえ、僕と東雲さんがやらしいことするとこ想像しとったんか?エロいのぉ~!!」
そう言うと遥はうわははと大声で笑った。
「クソ!あああ~~~!!!」
和は両手で頭を抱えて大声を出した。想像していませんと嘘はつけなかった。
「え?和の想像ではどっちなん?」
笑いすぎて涙目になった遥がそう訊いた。
「俺の想像では……東雲さんが……あああ~~~!!!」
嘘のつけない和が頭を抱えて絶叫する横で、遥は腹を抱えて笑っていた。