僕は男でもいけるけんね
「ほんでね東雲さん、和が僕と東雲さんが付き合うとったらどうしようかと思とんですよ」
「おいおっさん!」
「おいこらおっさん!」
思い出し笑いをしながらそう話す遥を和がにらみつけたが、逆に笑えるだけだった。
「どっちがどっちって?」
円がそう訊いたので、遥はニヤニヤしながら和の顔を見た。案の定、和は顔を赤くして目を泳がせていた。
「あ~、ほういう」
察しのいい円は、ゆっくり瞬きしながらうなずいた。
「僕は男でもいけるけんね」
そう言って涼しげに笑う円に対して、和は口を開けて、遥は笑顔を引きつらせて固まっていた。
「あの、どっち……なんスか?」
好奇心に負けた和を、遥が抗議の意を込めて小突いた。
円は真剣な顔で数秒思案した。
「どっちでもいけるけどな。伊勢原さんはどっちがええですか?」
そう言って円は黒目がちな目で遥をじっと見つめた。
「いや、僕はその……」
「嫌なんですか?」
「嫌、というか……」
「ええんですか!?」
「いやいやいや……」
円に肩をつかまれ、やたらいい声でそう言われた遥は、思わず悲鳴を上げた。
3人のやり取りを黙って聞いていた静が、笑い転げていた。