おまえ彼女おらんの?
なぜか乗務員休憩室にいた静に、和が唐突な質問を浴びせた。 「おらんよ」
静は涼しげに笑ってそう言った。
手元には甘いミルクコーヒーの缶があった。
「欲しないん?」
不思議そうな和に対して、静はウフフと笑った。
「何がウフフや」
和が舌打ちすると同時に、休憩室のドアが開いて遥が入ってきた。
「和とエビちゃんやん、珍し」
二人を交互に見て遥が言った。
静は立ち上がると遥の横に立ち、日焼けした腕に自分の腕を絡ませた。
「おっ?」
遥は笑顔のまま、少し驚いたような声を出した。
「僕が好きなんは伊勢原さんやけん」
「きったないのぉ」
「伊勢原さんもなんかほんなこと言うてたやん、なんなん?もう!二人が付き合うてるって噂流したぁけんな!」
むせながら和が言うと、遥と静は顔を見合わせて笑った。