コンシューマー・エンパワーメント
文字通り、消費者に力を与えること。力を増していること。主に情報化の文脈で語られる。
従来、生産側(企業側)が多く情報を握る「情報の非対称性」が存在していたが、情報化によって消費者が「エンパワーメント」されることで解消され、市場原理が最適化されるという命題。 たとえば経営学者の國領二郎教授は、『デジタルID革命』(日本経済新聞社、2004年 asin:4532311179)で、ICタグ利用について「コンシューマー・エンパワーメント戦略」を提唱している。これは、いわゆる消費者側の消費行動をトレースしてマーケティングや広告に活かそうとするデータベース・マーケティング的なものの対概念として提示されている。
國領はトレーサビリティという概念を、生産者側が消費者側へと連鎖していく情報を追跡していく「トレース・フォワード」(データベース・マーケティングなど)と、消費者側が生産側へとさかのぼって情報を追跡していくトレース・バック(「この野菜を作った人はOOさんです」というような、生産者情報の開示)とを区別し、後者の側の有効性を説く。
というのも現状診断として、そもそもICタグの利用につきまとうプライバシー問題の根底には、利用者に「知らないうちに、企業や権力者に情報を握られて弱い立場になってしまう」ことへの恐怖感、つまり「情報の非対称性」がある、という認識がある。この情報の非対称性を小さくするために、「顧客に情報と選択権を寄り多く与え、そのことによって増す満足感や、販売機会の増大を軸にビジネスモデルを構築する」という戦略こそが有効ではないか、と國領は提唱している。 國領二郎 他『デジタルID革命』(日本経済新聞社、2004年 asin:4532311179)