条・項・号に「第」を付けるか否か
ポイント
条・項・号の番号等を表記するとき、「第」は略して構いませんが、「正式には『第』を付けるものである」ということを知っておくのは必要です。
略して書く場合、枝番号の付いた条において項まで書きたいときは、項だけに「第」を付けるという便法を用います。例えば「7条の2第1項」。 この「法を学ぶ」でも、引用を除き、以上のようにするつもりです。
https://youtu.be/VSwLyp943XI
正式
正式には、条にも項にも号にも「第」を付けます。例えば「第2条第9項第5号」。
号の下の階層であるイ・ロ・ハには「第」は付けません。「第2条第9項第5号第ハ」ではなく「第2条第9項第5号ハ」とします。
枝番号には「第」は付けません。「第7条の第2」でなく「第7条の2」とします。
行政官庁の公式の公表文書は、基本的に、「第」を入れているように思います。例外はあるかもしれません。行政官庁内部の非公表文書等でどうなっているのかは、存じません。
略式
裁判所の判決をはじめとする司法界隈、大学界隈、法律出版社界隈などでは、基本的に、「第」を略します。例えば「2条9項5号」。
例外的に、例えば、法律出版社が行政官庁の準公式の見解を書籍にして出版するもの(例えば法改正の立案担当者による解説書など)で、「第」を入れているものがあります。しかし、同種のもので、「第」を入れていないものもあります。
正式に従うか略式をとるかは個々の自由ですが、司法界隈・大学界隈・法律出版社界隈などで略しているので、略しても基本的には問題はありません。手書きの場合もそのほうが楽ですね。
ただ、「これは正式ではないのだ」ということを知っておくことは必要です。例えば、下記のようなことにスムーズに対応できるからです。
「第」を略していると、例えば、条の枝番号の次に項番号が来るとき、表記に窮します。例えば、正式には「第7条の2第1項」であるものが、「7条の2 1項」になってしまい、21項だと勘違いされる可能性があるからです。
したがって、「第」を略する界隈では、このようなときだけ「第」を書いて数字の連続を防ぐ、という便法を用いています。例えば「7条の2第1項」。
枝番号の付いた条も1つの条であって、繰り返し出てくる場合には「同条」と表記しますので、その場合には項番号において「第」を略しても問題が生じないことになります。
例文:7条の2第1項による課徴金計算は、所定の要件を満たす場合には、公正取引委員会が合理的な方法により推計して行うことができる(同条3項)。
正式には「第」を付けるのですから、正式な法令において、もし、「第」が付いていなければ、別の意味であるということになります。
例えば、「前二条」の「二条」は、「第」が付いていませんから、第2条という意味ではありません。「前二条」は、直前にある2つの条、という意味になります。
次の例の「前三項」は、直前にある第3項という意味ではなく、直前にある3つの項である1項〜3項を指します。
(一般の先取特権の効力)
第三百三十五条 一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
2 一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
3 一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。
4 前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。
略式の会話で単に「2条」というと第2条のことになってしまうので、2つの条を指したい場合に「2箇条」などと呼称する例に接することがあります。
難しいことを言っているように聞こえますが、ふだん略して楽をしているために、一定の場合に逆にややこしくなっている、というだけです。
「第2条6項」のような表記は、必要もないのに正式と略式が混在していますので、避けるのが無難でしょう。