限定合理性(bounded rationality)
満足化基準による意思決定を行うような決定主体の持つ合理性
サイモンはその後、産業組織の研究をはじめ、あれこれ見つけた中で特に注目されたのは、企業の内部組織と、企業の外的な事業上の意思決定が、新古典派理論にいう「合理的」意思決定にはちっともあてはまらない、ということだった。1950年代にかれは怒涛のように本や論文を発表し、そこでは意思決定の問題にかなり専念している——そして「限定合理性」に基づく行動理論を考案した。サイモンによれば、エージェントたちは将来について不確実性に直面し現在情報を得ようとすると費用に直面する。つまりこの二つの要因が、エージェントによる完全合理的な意思決定の度合いを制約してしまうのだ。したがってサイモンによれば、エージェントたちには「限定合理性」しかなく、意思決定は「最大化」によるのではなく、「こんなもん化」("satisficing" 訳注:satisfy とsufficeのかばん語)、つまり「こんなもんか」というがんばり水準を設定し、それが達成されればそこそこの成果ということで満足し、達成できなければ当初の期待水準を下げるか意思決定を変えるかすることによるのだ、という。こうした「限定」され不確実な現実世界では、こうした「経験則」がエージェントたちの達成できる最大限なのだ。
企業
企業は合理的判断によって官僚化する。ただしその合理性は限定合理性を原因とする。
組織は昇進サイクルによって、それまでの意思決定情報を破棄することになる。
現在の組織の判断がどのような経緯や意思決定に成されたのかが分からなくなるため、タブーとなっていく。意思決定情報は昇進サイクルで破棄されるが、判断やルールは残り続ける。介入不能なルールが増えていく。それが積み重なることによって硬直化していく。
組織の人数規模が多いほど、この意思決定情報の破棄は後から参画するメンバーにとって摩擦となる。組織の成長とは限定合理性のキャパシティをスケールすること。
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