発達の最近接領域(ZPD:Zone of Proximal Development)
(最近接発達領域)
Zone of Proximal Development (ZPD)
今日、助けられながらできることは、明日は一人でできる
次に続く発達の領域
今日子ども達が助けられてできることは、明日一人でもできることである
https://gyazo.com/f8280a0668cc5f0166f229312974dd4f
レディネスを整える
できるようになるために必要な知識や経験だったり、モチベーションがある状態をレディネス(準備性)といいます。
ヴィゴツキーの説によると、子どもは現時点の自分の能力より少しだけ先の素材を学んでいるとき、もっともよく学び、もっとも強いモチベーションを抱く*4。教室で言うならば、教師が生徒に対して越えるべき明確なハードルを示し、なおかつ、それが既存の能力に対して過酷すぎない(完全に歯が立たないほどではない)ようにするのが効果的、というわけだ。ヴィゴツキーはこの一番いい状態を「最近接発達領域(ZPD)」と呼び、シンプルな図で解説している。
この理論は、パジトノフたちがテトリスにあれほど夢中になった理由を説明している。一般的に大人がゲームで遊ぶときは教師の助けを伴わない。だが、巧みに設計されたゲームはユーザーが気づかないうちに教師役を果たし、ちょうどいい学習目標を与えている(宮本茂がデザインしたスーパーマリオブラザーズの1面が、初心者に基本操作を教えるプロセスになっていたように)。
そしてテトリスの場合は、熟練度の差にかかわらず、誰もがずっと最近接発達領域で遊びつづけることになる。リチャード・ヘアーの被験者がそうだったように、最初は一番ゆったりと遊べるレベル1でも苦戦するが、だんだんとコツを飲み込んで、少し難しいレベル2、レベル3と進んでいく。プレイヤーの腕が上がっていくのと同時進行で、ゲームの難易度が少しずつエスカレートしていくのだ——最難関をあと少しで攻略できる、という状態がつねに維持されるというわけである。
https://gyazo.com/4eef4b75f2d9e4a6bef9364b0d801c41
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クラス替え
サクセス・フォー・オール
「サクセス・フォー・オール」のクラス替え制度の始まりは一九五〇年代にさかのぼる。より的を絞った教え方ができるようにするためだ。年齢や学年ではなく成績のレベルに応じて生徒をグループ分けしたほうが、的確な教え方ができる。ナシールのような子どもたちに、もっと厳しい、しかも本人に合わせた指導がしやすくなる。
「サクセス・フォー・オール」では毎日このクラス替えが行われる。午前九時きっかりに全校生徒が読解力のレベルに応じてそれぞれの教室に移動する。ナシールの場合は、自分のレベルに合った指導を受けられるように五年生の教室から二年生の教室にのっそりと歩いていく。そして九〇分間の読解の授業を受けたら、また自分の教室に戻る。
クラス替えの根拠は確実な結果を生む「知識効果ナレッジ・エフェクト」だ。新しいことを学ぶには、スキルや知識が『三匹のくま』の女の子の有名なセリフどおり「ちょうどいい」状態でなくてはならない。めざすスキルが今のスキルレベルとかけ離れていたら、学習していても途方に暮れてしまう。だが簡単すぎてもいけない。学びがないからだ。学習の目標として理想的なポイントは、知っていることやできることのちょっと先にある。