文脈が途切れた答え
直接的な答え方が意図せぬ結果をもたらす場合があるということだ。相手に自信を失わせるおそれがあるのだ。質問者が説明を求めたのに対し、返ってきた答えは事実を述べただけだったらどうだろう。
・コップの水に油を注ぐと浮くのはなぜ? 比重。
・気候変動の原因は? 大気中の二酸化炭素の増加。
・潮の満ち引きが起こる理由は? 月。
そのものズバリの、正確で、事実のみを述べた答えを示せば、回答する側にとって問題を解決したかに思える。ところが実際には、質問者を黙らせる結果になるのだ。何の背景も加えずに事実だけを述べると、次の段階に進む責任を質問者に負わせることになる。質問者が比重やCO2についてよく知らなかったら、続けて質問することも、関係のあるアイデアを訊ねようともしないで、ただあきらめてしまう可能性が高い。そのアイデアの顧客になる望みは、まったく絶たれてしまう。
僕たちは誰もが、質問されたら答える。そのとき難しいのは、質問した人物にもっと役立つように答えを返すことだ。残念ながら、多くの聞き手が説明を必要としているのに対し、話し手は知の呪縛のせいで、背景抜きの直接的な答えでも相手が理解できると思い込んでいる。