怪物問題
五本の手を持つ地球外の怪物が三つの水晶球を持っている。怪物も水晶球も大、中、小のサイズがある。現在、小さい怪物は大きな水晶球、中サイズの怪物は小さな水晶球、大きな怪物は中くらいの水晶球を持っている。これではバランスが悪いので、水晶球を交換して、怪物のサイズと水晶球のサイズを一致させたいと彼らは考えた。しかし、次の三つの作法にしたがって交換しなければならないので、問題は複雑である。
1 一度に一つの水晶球しか移動できない
2 もし二つ以上の水晶球を持っている場合は、大きなほうしか移動できない
3 移動させたい水晶球よりも大きな水晶球を持っている怪物には、その水晶球を移動させることはできない。
この問題は、怪物をペグ、水晶球を円盤と考えれば、ハノイの塔と同じ問題空間を持つ問題である(ただし初期状態、目標状態は異なる)。このような問題を同型問題と呼ぶ。もし探索が人間の問題解決を左右するのであれば、ハノイの塔も怪物問題も同じように解けるはずである。しかしながらこの予測は正しくない。怪物問題の解決時間は、ハノイの塔のそれの六~七倍程度にもなる( 42)。この結果は、探索による問題解決を否定するものではないが、探索という考え方だけでは問題解決をうまく捉えきれないことを示している。
この問題は何ともわかりにくいという印象を多くの人が持つと思う。つまり、そもそも問題をうまく理解できないので、解くという作業に入れないというのが多くの人の感じるところだろう。
問題理解がうまくいかないために問題表象を作り出すことが難しく、その結果解決ができない、ということになる。
問題表象とは、与えられた問題中の情報を有機的に組織化し、それがどのような状況について述べているのかを心の中に表したものである(第2章で述べた、状況モデルとほぼ同じである)。そしてこの問題表象ができ上がった後に、探索やプランなどを用いた問題解決が行われる。
出典