個人指導
学習という観点から見ると、ペインは非常に初歩的な形の個人指導をしてくれているわけだが、この個人指導の効果には、反論しようのない膨大なデータの裏づけがある。数十年前に、心理学者のベンジャミン・ブルームが個人指導は他の教育法に比べて二倍の効果があると指摘した。ある政府の報告書も「最も効果的な教授法である」とお墨付きを与えている。技術サポートでもフランス語でもマーケティング戦略でも、生徒一人に先生一人をつけるのが、学習の最も効果的な方法の一つなのだ。
難点はもちろん、個人指導はコストが高いことだ。個人指導には人手がかかる。だからアップルなどのコンピュータメーカーは持ち込み診断を必ず五分未満で終わらせるようにしているし、低予算型ホテルの大半がコンシェルジュサービスを置いていないのもそのためだ。
・フィードバックが増える
・フィードバックのタイミングが的確になる
・知識レベルが合わせられる
例えば私の勤務先で技術サポートを担当しているペインは、私が何をわかっていないかがわかっている。相談すると彼はまず、どんな不具合が起きているのかを聞き、それから私がそれを直すために何をやったかをたずねる。プログラムの更新はしましたか? ソフトウェアはわかっていますか? 今回初めて起きたトラブルですか?
これは個人指導の典型だ。例えば一対一授業で生徒が分数について勘違いしていたら、先生は授業を止めて説明するだろう。イースト菌についてわかっていないがパンを焼きたいとしたら、先生はその解説をしてくれるだろう。初めての街に来て言葉がわからなかったら、ホテルのコンシェルジュが地元の言葉で「ありがとう」を教えてくれるかもしれない。
個人指導に効果があるのは、生徒がわかっていることを土台にするからだ。先生は私たちがすでに理解していることに合わせて情報をくれる。イントロダクションでこれを「知識効果ナレッジ・エフェクト」と呼んだ。要するに、対象についてまったく知識がないと学習は難しいのである。