リンダ問題
リンダ問題
リンダは、独身で三一歳の率直で聡明な女性である。彼女は大学で哲学を専攻して、社会正義の問題に関心を持っており、学生時代は反核デモにも参加した。
リンダは「銀行員」と「フェミニストの銀行員」のどちらの確率が高いだろう。
おもしろい結果が出てくる。リンダが「フェミニストの銀行員である確率」のほうが「銀行員である確率」よりも高くなるのである。「それの何が悪いの?」と思う人は、ある人物が大学生である確率と女子大生である確率のどちらが高いかを考えてみればよい。むろん女子大生は大学生であるので、その人が女子大生である確率は大学生である確率よりも必ず低くなる。リンダの問題はそれと同じ理屈である。「フェミニストの銀行員」は必ず「銀行員」であるので、前者が後者よりもあり得そうということは考えられない。
この連言錯誤はどうして起きてしまうのだろうか。それはプロトタイプと密接に関係する。私たちはマグカップなどについてはたくさんの事例を見ているので、その平均的な特徴を捉え、そこからプロトタイプを作り出す。しかし、フェミニストはどうだろうか。明らかにマグカップよりは数が少ないだろうし、仮にある人がフェミニストであったとしても、そうしたことを表明している現場に立ち会うことはあまりないだろう。十分なサンプルがない場合には、メディアなどに登場するいわゆるフェミニストという人たちがプロトタイプの代わりになってしまう。
出典