フィードバックの隠蔽
ポジティブ
先にも述べたとおり、行動アーキテクチャの考え方は、誘惑を完全に避けるのは不可能であることが前提だ。だから自制と回避のかわりに、依存行動や体験の「心理的な近さ(近接性)」をごまかすことを狙って、それを叶えるツールをデザインすることが多い。
ウェブ開発者のベンジャミン・グロッサーが開発したツールも実に巧妙だ。グロッサーが自身のウェブサイトで次のように説明している。
フェイスブックのインターフェイスは数字であふれています。僕たちの社会的価値と活動、友達として表示される、「いいね!」やコメント、その他多くのことが数字や指標で測られ、提示されています。「フェイスブック・ディメトリケーター」は、ウェブブラウザ上でこうした数字を非表示にするアドオンです。友達が何人いるのか、「いいね!」が何件ついているかを重視するのではなく、そこに誰がいて何を話しているかを重視するようになります。友達の数は表示されません。「16人が『いいね!』しました」は、「みんなが『いいね!』しました」になります。ディメトリケーターはこのように見た目を変えてしまうことによって、フェイスブックユーザーに、数字に縛られないシステムをすすめています。数字がなければ体験がどう変わるか試してみてください。僕がこのアドオンを開発した狙いは、数字が生み出す「価値観を規定された社交」を打ち砕き、定量化に頼らないネットワーク社会を実現することなのです。
ディメトリケーターのアドオンをブラウザにかませると、「いいね!」やコメントや友達の数を確認できなくなる。
通常では、フェイスブックの一般的な数字を表示した画面は右の画像のようになっている。すべてが数字で計測されていて、時間の経過とともに更新される。新しい「いいね!」やコメントがつくたび数字が変わるので、つねに何かしらチェックすべき対象がそこにある。
https://gyazo.com/9fcc739c7d6e3c92fcce10be12bfeeef
Facebook Demetricator
イーロン・マスクは、X(旧ツイッター)のタイムラインに表示するものを減らし「よりクリーンな」見た目にするという新ビジョンを掲げている。そのためには、基本的な機能や使い勝手が犠牲になることもいとわない。ニュース記事の見出し削除に続き、今度は返信やリポスト(リツイート)、いいねのデータをタイムラインから削除する予定だ。
X「返信・リポスト・いいね」の数を非表示に マスクが宣言
Twitter(X)で、「いいね」「リポスト」の数が非表示になるのは、SNS依存症の人への対処としてよく実験されているやつなので有効かも。過剰にいいねやリポスト数を追い求めなくなるので、それらを指標にポストしていた人の活動がだいぶ収まる。