トートロジー
循環論法
『なぜ』『どうして』と真剣に考えて、答えになっていない答えには、満足しなかったんだ
ニュートンが現われる前、一五〇〇年にわたって、プトレマイオスのような科学者や彼の先生、弟子たちは、惑星は円を描いて動いていると言っていた。『なぜ?』 それは、円が神聖な形だからというんだ。しかし、どうして円が神聖な形だとわかるのかな。それは惑星さえ、円を描いて動いているからだ。こんな具合だったんだ
どうして物体は落下するのか。それが物体の性質だから、物体は落ちるものだから、そうアリストテレスは説明していたんだ。でも、二〇〇〇年近くもの間、人々はその説明を当然のこととして受け入れて、疑問さえ抱かなかった。だが、それは違うと思う。いいかな、『なぜ』『どうして』と質問して、本当に意味のある答えを求めることはとても大切だ。それが鍵になるんだ
明晰に思考する鍵は、循環ロジック、つまり議論がぐるぐると同じところを堂々巡りするのを避けることだ。
すべての事柄は、原因と結果の関係でつながっている。そして、その根底には共通した根本的な要素が存在する。だから明晰な思考をするための鍵となるのは、そのロジカルマップをきっちりと構築することだ。まず、どれか一つ現象を選んで、そこからスタートする。どの現象でも構わない。そして、なぜその現象が存在するのか、と問いながら、根本的な原因までどんどん辿っていく。問題は、そうやって結果と原因の関係を順に辿っていくと、やがて、私たちの感覚では、直接確認しようがない抽象的なものにぶち当たる。これが難しい
実は、私たちのまわりはトートロジーだらけだ。トートロジーだらけだから、それに人は鈍感になって、気づくこともほとんどない。しかし実際には、私たちの会話やそれから新聞の記事などにはいつもトートロジーが存在している。例えば、『彼らは、勝とうという十分なモチベーションがなかったから試合に負けた』という記事があったとしよう。しかし、十分なモチベーションがなかったという証拠については、ふつう記事の中では触れることもない。あえて証拠を求めたとしたら、『だって、試合に負けたじゃないか』という答えがきっと返ってくるに違いない。
「弊社はお客様の声に耳を傾けます」
つまり、「バカ」のことばとは、同じことを繰り返すことば、そして自分のことしか語らないことばなのだ。そこで語られるのは、自分が聞いたこと、経験したこと、見たこと、感じたことなどの、個人的な実例でしかない。主観的な見解を相手に押しつけ、「真摯さ」と「誠実さ」をアピールするだけでなく、自尊心を満足させ、充実感を味わうことができる。バカは自分で何を話しているかわかっているつもりで、実際に頭の中にあるのは、自分の発言はすべて正しいという信念だけだ。