まち直し5つの原理
5つの原理
1.パタンの原理
ゾーニングされた「用途地域性」のマップで「具体的な形態」を規定するのではなく、パタンランゲージによって「デザインプロセス」を管理します。パタンランゲージは「水への接近」「住宅クラスター」というように、デザインにおけるルールを規定するものであり、未来マップのように硬直的に形態を規定しない。
また、パタンランゲージはスケールを自在に扱うことができますので、部分の要求にも、全体の要求にも対応できます。しかも、誰にでも分かりやすく、その未来像がイメージとして把握しやすいのです。だから、素人にもプランニングに参加できるチャンスを与えることが可能です。
パタンはその「地域独自のもの」として新しく編集されたものを使用し、プロジェクト毎にそこから更に取捨選択することとなります。パタンは常に見直され、修正されていくことを前提としているのです。
2.参加の原理
パタンを用いたプランニングに欠かせないのが、住民参加です。パタンの実際の運用は、コミュニティの代表者によって行われるべきなのです。使用者自身が設計に参加することによって、初めて有機的秩序を持った良好な建築/都市が出来ます。なぜなら、使用者だけが設計条件を正確に把握しているからです。
自然の都市をつくってきたのは使用者たる素人であることを見れば明らかでしょう。また、住民が自分を取り巻く世界を設計することによって、世界との一体感を感じることができます。それは、所有感(土地への愛着)を生み、創造的自治(能動的なコミュニティへの関わり)をもたらすでしょえ。
3.小さくつくっていく原理
パタンランゲージには、漸進的変化(少しずつ修復していくこと)という考え方も欠かせません。有機的秩序は生命体と同じ概念で生み出されるのです。生命体は絶え間なく少しずつ修復されることで、成長を遂げていきます。都市もそうあるべきであり、補修/修繕/増改築によって欠点を補っていく柔軟な開発が望ましいのです。大きな開発や新築、建て替えは、非連続ですから、周囲からの孤立を招きます。資源の浪費、予算の奪い合いを招く点も好ましくありません。
開発の規模を大中小に分けて、それぞれが同額、つまり小さいプロジェクトほど数が多くなるような目安を設ければ良いでしょう。
4.診断の原理
パタンランゲージだけではマップが示されないために、包括的秩序(道路、線路などの空間的体系のこと)の創造が難しいのです。その解決策として、未来理想図的マスタープランの代わりに、パタンランゲージを用いた現状診断マップをつくることを提言しています。 診断マップとは、あるパタン(もしくはすべてのパタン)についての現時点における評価を、まとまったエリア毎に地図に落とし込んだものです。例えば「手近な緑」がどこに豊富にあって、どこに足りないのかを示す地図は、緑路をどこにどのように通せばいいかというような空間的体系の構築の助けになります。
診断マップは問題点を面的に把握できますので、空間全体の体系的な秩序、すなわち「包括的秩序」を構築できるのです。しかも、それらは未来マップではなく現時点の診断マップなので、定期的に更新することで硬直性も起こらないのです。このマップは当然、全コミュニティに公表され、プロジェクトの考案する機会をすべての人に与えるようにします。
5.調整の原理
最後に、各プロジェクトの実施/延期は、公的な財政委員会の場で討議すること