「ことばがことばを生む」三つのメカニズム
「ことばがことばを生む」三つのメカニズム
・身体と状況の相互作用 p146
ある坂道を歩いているとき、斜度や道幅に意識を向けて、「傾斜」、「道幅」ということばを表出したとしましょぅ。すると、その幅方向にある石垣に意識が向き、「石垣」ということばが生まれるかもしれません。斜度のきつい坂道の先に見える「空」ということばも生まれるかもしれません。
これは連想ではありません。あることば(「道幅」や「斜度」)と、あなたの身体と、そのときの現場状況の関係から、別のことば(「石垣」や「空」)が生まれたのです。身体と現場状況の相対がそのときの経験の実態です。「道幅」を意識したからこそも身体が道幅方向に意識を向け、その先の石垣に意識が写ったのです。
斜度のきつい坂道を歩くとき、歩みは遅くなります。足腰にかかる負担を感じながら首をぐっと下げて足下に視線を落としたり、到達地点を眺めたりして、気持ちを震い立たせます。傾斜がきつい坂道だからこそ、到達地点の延長線上の向こうの空が見えます。坂道の状況と、身体の振る舞い方(ときどき到達地点を眺めるという振る舞い)の関係で、「空」が意識に上るのです。
・知識に基づく推論
「水は高いところから低いところに流れる」という知識から、「低地には水が集まる」や「低地は湿気が多く、台地はカラッと乾いている」ということが推量できます。
着眼点/変数を見出す p148
ことばが増えるとは、つまり、着眼点を得るということです。着眼点とは、「目のつけどころ」です。よい着眼点は成功につながることを、わたしたちは仕事の上でも経験しています。
自分にとってよい着眼点を得るために、「ことばがことばを生む」という現象を積極的に利用することが学び手にとって肝要です。
生態的心理学の分野では、着眼点のことを変数と呼びます。生態的心理学の祖であるジェームズ・J・ギブソンは、これまでに完治したことのない変数を環境に見出すことこそ学習であると説きました(Gibson 1955)。
問いの醸成 p150
問いの種類として、感触、違和感、疑問、解釈、分析、仮説、問題点、問題意識、目標
(浦上 2015)
論文
浦上 2015
浦上咲恵, 小関美南, 奥野裕二郎, & 諏訪正樹. (2015). 生活音を駆使し創造的に暮らすためのトレーニングフレームワーク. SIG-SKL, 20(03), 15-22.
出典