分配の意思表示先が共同体
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小川さやか.icon多大な能力差のあるハンターらはあえて自身の道具ではなく他人の道具を使用することで道具の制作者に肉が渡るようにしたり、大きな獲物を仕留めた後は猟を休んで分配を受ける側にまわったり、分配された肉をけなしたり謙遜したりという細やかな実践(追記:不均衡を対等にしようとする実践)を通じて、負い目や権威の発生を慎重に防ぐことで平等主義的な社会を築いている。これらの実践は社会をつくる根源的な営みであり、狩猟採集民が豊かなのは「自然」や「足るを知る」精神よりも、その知恵や生き方ゆえであった。丸山淳子はボツワナの狩猟採集民サンを事例に、範囲が明確化された集団が先にあって、その集団の規範や義務として分配がなされるわけではないこと、むしろ、その時々の分配がいま私はその人間とともにいることを望んでいるという意思表示になり、その結果として共同性が立ち現れる、共同性があるかのように示されることを論じている。(p230) [論考]反自動化経済論 無料はユートピアをつくらない from: ゲンロン12