体験こそが神性
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石倉敏明.icon (経験への真摯さの話を受けて、)河合隼雄さんが言っていた神話の定義です。河合さんはユングの心理学を研究していらっしゃったわけですけれども、ユングの自伝から繰り返し引用されているエピソードがあるんです。それはユングが東アフリカのエルゴン山中で先住民と対話した時のエピソードです。その先住民たちの間では太陽が非常に大切にされていたので、ユングは彼らに「太陽は神か?」と聞いたそうなんです。すると彼らからは「違う」という答えが返ってくる。ではどういうことかというと、彼らにとって太陽を人格化して神としているのではなく、太陽が昇ってくる時、その瞬間こそが「神」なんだというんです。太陽が昇ってくる瞬間に暖かさを感じたり明るさを感じたりすること、その体験こそが神性なんだ、というんですね。このユングの聞き取ったエピソードが河合さんにとっては非常に重要な気づきだった。ユングの壮大な心理学の体系全体が、こういう出来事に対する驚きや共感から発しているのだ、と河合さんは言うんです。もちろんユングには原型論をはじめ、とてもユニークな無意識についての理論の体系がありますけど、そのベースにある考え方は、こういった世界への直接的な接触であると。ユングは、太陽が昇ってくるという事象に対する気づきこそが物語を生み出すのだ、という言いかたをしている。朝の日の出に「神」を感じたというのは、ユングにとっては非常に小さな、個人的な出来事だったかもしれません。けれど、それはキャンベルがウパニシャッドから学んだことにも通じていると思います。(p359-360) カール・ロジャーズ.icon 私にとって、体験こそ最高の権威である。(p34) カール・ロジャーズ.icon 「どんな人の考えも、私自身の考えのいかなるものも、私の体験ほどの権威はない。私のうちなる生成のプロセスにおいて真理に近づていくために、何度でも立ち返らなければならないもの、それが体験である」(p34)