経験への真摯さ
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辻村伸雄.icon たとえば、神話学者のジョーゼフ・キャンベルがこういうことを言ってます。ウパニシャッドにこういうことが書かれている。夕日を見て感嘆する人は神性の中に入っていける。そういう人は自分より大きな存在に開かれていく。キャンベルはそういうことを書いている。これはつまり、経験に対する真摯さの話です。それは夕日をみて「ああ」って感嘆するような、そういう体験のことであり、そういう体験というのは、実は誰にでもできるもので、思春期の頃にはみんなそうだったかもしれない。それを詩に書いたりして、自分の中で「黒歴史」になったりしているかもしれません。でも実は、その瞬間が、世界と感応する戸口に立った瞬間だったとしたら、One-worldじゃない別の世界、別のレイヤー(層)があるんだということに気づきかけた瞬間だったとしたら、そこから多元的世界が開けてくると思うんです。そこから多元的世界での暮らしが始まる。だからこれはやっぱり一人ひとりが探求していけることなんだろうと思います。そういう自分の暮らしの中の手触りを大事にするということが真摯さなんです。(p359)