「人間とはなにか」第2部講義メモ
01:48:20 第2部開始
01:49:18 ボノボ社会とチンパンジー社会
ボノボは平和的、チンパンジーは競合的
ボノボが暮らしている森(沼地)の動画
コンゴ共和国ワンバ
01:51:52 ボノボの食物分配
現地の果物「ゴリンゴ」を食べるボノボの動画
非常に寛容に分配する
大人のメス同士
高度に社会化された食物分配
日常的な果実の分配
豊富にある果実も分配
違う群れの個体とも分配
「おすそわけ」の起源?
01:59:54 協力して道を渡る
チンパンジーの集団でまとまる力による協力行動
チンパンジーの道渡りの動画
道を渡る子供や年老いたメスを大人のオスが危険な道路の真ん中で待つ
02:02:20 ボッソー(チンパンジー)とワンバ(ボノボ)で道渡りを比較
チンパンジーは血縁関係を問わず待つ
ボノボは血縁の個体を待つ
チンパンジーは群れ同士は非常に敵対的なので、群れの中では協力的になる?(山本)
特に群れの外に脅威がある場合に集団としてまとまる力が強い
ボノボは平和的なので、群れとしてまとまる力が生まれない?(山本)
02:05:39 戦争と協力の進化的期限
ボノボは豊かな環境に暮らしている→2個体間の協力が生まれた(山本)
チンパンジーは貧しい環境に暮らしている→集団の協力が生まれた(山本)
これは「共進化(花と昆虫が相互作用で進化するように、戦争によって協力の形質が生まれている)」と見ていいのか?(青山)
ボノボやチンパンジーの特性も共進化として検証したいと考えている(山本)
02:08:51 熊本サンクチュアリ
動画で紹介
02:09:36 チンパンジーは共通の敵を前に仲間同士の結束を強める
チンパンジーの集団に対して、見知らぬチンパンジーの声を聞かせる実験
ストレス反応を示す
集団間の関係はよくなる(近づくなど)
人間の世界でも見られるのではないか(山本)
02:14:02 ヒト・チンパンジー・ボノボの社会
集団ダイナミクス
チンパンジー・ボノボ:群れのメンバーシップが固定されている
→離合集散社会
ヒト:群れの単位が柔軟に変わる
→重層社会
重層社会はヒトの特徴と言われている(山本)
02:16:43 複雄複雌社会から「家族」の成立
固定的な配偶関係(家族)が最小単位になって、社会の重層化が行われる
競合と協力の単位が柔軟に変わる
02:20:18 野生ウマ@アルガ山、ポルトガル
ポルトガルに行きたかった、研究にドローンが使いたかった(山本)
馬の重層社会を調べる
アルガ山の300頭ほどのウマを全個体を個体識別し、群れを観察する
神戸大と京大のプロジェクトなので「兵庫群」「京都群」と呼び、個体を町の名前にした(山本)
研究中の動画、ドローンによる上空からの個体観察
上から観ると個体がどの向きを向いているか、距離がどのくらいかを正確に測れる(山本)
群れ内の個体間関係と群れ間の関係性を調べる
社会ネットワークの可視化
02:25:46 30分ごとに全集団・全個体の配置をドローンで記録
連続写真を1平方メートルくらいのフィールド全体を合成(オルソモザイク図)
ウマを個体識別し、ネットワーク分析することで、ウマの重層社会が見えてくる(山本)
ウマの社会は大人のオス1-2頭と複数のメスと子供で群れを作る(ハーレム型)
02:30:29 なわばりはなく、平原で共存
一つの群れの移動域を多角形で表現
移動域が重なり合っている
群れ間でも相互に行動を調整している(山本)
02:34:05 家畜化
家畜化された動物の特徴
たれ耳、顔が平面的、脳容量が小さくなる、おとなでもよく遊ぶ…
2000年前後から犬の研究が盛んに
ブライアン・ヘアの犬と人類進化の研究
ヒトも「(自己)家畜化」した動物と考えられている
02:36:23 「家畜化」が知能の進化を促したか?
イヌは、社会的シグナルを読む課題で、オオカミやチンパンジーよりも成績がよかった(ブランアン・ヘアの研究)
家畜化が認知的な進化を副産物として生み出した?
ブライアン・ヘアのボス
イヌでの研究は盛んだが、ウマの家畜化について研究している(山本)
02:38:19 ホルモンから認知・行動・社会・生態まで
オキシトシン(ホルモン)の投与による社会性の変化
ウマの社会的認知に関する認知実験
などなど…
ウマは顔が平面的でない気もするし、気性も荒い気もするが、家畜化はどうなっているのか?(青山)
家畜化症候群がすべての動物に当てはまるわけでもなく、はっきりはわかっていない(山本)
ウマは視界が350度あるが、死角に対しては防衛反応が働く。草食動物だし臆病ではある(山本)
02:41:34 ボノボとチンパンジー
ボノボはチンパンジーと比べて「自己家畜化」した動物である可能性
02:42:07 類人猿・家畜動物での比較研究
いろんな動物での比較研究
02:43:51 ネコの顔の研究
飼い猫と野良猫の顔の違い
山猫と野猫、飼い猫の顔の比較
身体接触(なでられる)→内分泌系の変化?→顔形態の変化?→かわいさアップ→身体接触…(山本)
02:47:45 日本における伴侶動物の殺処分
人と動物の絆形成について理解するための研究(山本)
競走馬も殺処分されている
引退した競走馬のリトレーニング
02:54:17 遊びからみる動物の社会性・ヒトの社会性
ニホンザルの遊び行動の研究
壹岐 朔巳さん
島田 将喜さん
ニホンザルの遊びの映像
野菜(?)を池にばしゃばしゃする
小石を岩にこする
モノを使って遊ぶ→道具使用につながる?(山本)
木の枝をつかって追いかけっこ
意味のないものを取り合う→見立て遊び?(山本)
枝の取り合いが始まるにあたり、遊びが始まるシグナルがあまりなかったような…(青山)
小猿のじゃれあい
3者間のやりとりがなく、あくまで2個体での遊びになる(山本)
三項関係の認知がうまくできない?
同意形成が行われている場合がある?
サル同士がメタコミュニケーションをしている場面が初めて見られて面白かったです(青山)
大人の猿の遊び
ニホンザルでは基本的には大人の遊びは見られない
03:13:05 遊びからケンカへ
03:13:35 Chimpanzee smile?
歯をむいた顔はグリメスという表情で、不快の表情
この表情がヒトの笑顔に発展したという説もあるが…
03:15:42 noguchi-k「上司から無理を言われたときのサラリーマンの顔だ……!」 03:17:56 tokada「映画Nope.とかもそういう描写が…(動物とエンターテイメント)」 03:18:03 質疑応答2
03:19:22 ボノボとチンパンジーの特性と環境要因の関わりは?
簡単に伝えるとわかってない(山本)
(湿地ではなく)乾燥した環境で暮らすボノボでの研究を進めたいと思っている(山本)
チンパンジーはボノボに比べると環境比較がされている
乾燥した厳しい環境で暮らしているチンパンジーのほうが道具使用が多いという結果が出てきている(山本)
03:23:20 霊長類がフェティシズム(生存に結びつかない嗜好的な行動)を見せることはあるのか?
霊長類の遊びの定義として、その場での利益に結びつかないが、長い目で見ると役に立つ行動のことだったような気が…(山本)
相手との社会関係につながっていっている気がする(山本)
※ここは質問者さんと山本先生がすれ違っていた気が… dotimpact.icon
霊長類の遊び研究では自己目的的なものとして遊びを研究されてないのかも?
03:26:29 最初の問いかけで人間の特異性に本能と理性の違いを考えた。その後聞いていて共感や快情動をヒトが他の動物より持っている理由が気になった。
本能についていうと、先天性と後天性の切り分けができない、というのが定説になっている(山本)
後天的に獲得した形質が遺伝子の発現を制御するメカニズムを変化させる(エピデミック)
ボノボの食物分配も、人間でいうと理性だが、動物研究からするとそれを「理性」という言葉を使わずに分解して考えたい(山本)
03:33:39 tokada「別の言葉で説明することで見えてくるものがあると」 03:34:02 相互互恵のような関係の学習が進むかどうかの実験はあるのか
興味を持っている。チンパンジーはうまくいかなかったので、その後研究を発展させるアイデアがない(山本)
家畜化も面白いと思った。進化ではなく家畜化のような短いスパンでの形質の定着のようなことがありうるのか(質問者)
ヒトには規範がある。家畜化は個体の中での話で、互恵性のような複雑な規範の内面化は難しいのでは(山本) イヌも何かを持ってくるようなタスクはトレーニングできるが、何かをしてあげたらお返しに…というような規範はトレーニング(?)できないのでは(山本)
03:40:34 haruri「チンパンジーも群れの仲間を守る行動をとることがあるとおっしゃっていましたが、ボノボやチンパンジーが仲間だと認識できる人数ってどれくらいなのでしょうか?」 チンパンジーは大きなものだと100頭くらいの群れをつくる(山本)
淡路島のニホンザル集団は300頭くらいいる。サルはその300頭を内集団と認識しているのか? という検証をしてみたい(山本)
03:46:09 haruri「質問に答えていただきありがとうございます!ヒトは同じ学校、同じ国で仲間になることができますが、チンパンジーはどうなんでしょう。研究期待しています!」 03:42:51 tokada「動物は贈与や交換をするのか」 自分は飼い猫がいて、野良猫だったので最初の頃は外から鳥を捕まえてきて部屋に持ってくるようなことをしていた(青山)
猫は教育をする動物ととらえられている。子猫のハンティングの学習として親猫が半殺しの獲物を持ってくるようなことがある(山本)
チンパンジー・ボノボだと贈与が食物分配だが、あくまで相手がとっていくのを許すというもの(山本)
03:45:36 チンパンジーの表情の話が興味深かった。人間が動物を理解しようとするときにどうしても人間に寄せてしまうが、それ以外のアプローチがあるのか、また研究過程で動物との信頼関係をつくるときどうされているのか。
グリメスという表情がヒトの笑いの起源ではないかという説はファンフォーフが提唱している
これかな? dotimpact.icon
laughとsmile
smileは劣位個体が優位個体に対して攻撃を抑えるための表情だったのでは
それが快なのか不快なのかは総合的に観察して解釈していく(山本)
ウマ側がヒトをどのように認識しているのかに興味がある。それを科学的に検証したい(山本)
ヒトの表情にどのような反応を示すかを調査する
チンパンジーやウマなどの動物と関係を作るときに心がけていることは?(質問者)
自分より上の研修者はチンパンジーと同居など密なコミュニケーションをとっていた(山本)
安全面もあり、自分はそこまで感覚がわからない(山本)
チンパンジーとはアイコンタクトができる(山本)
ウマ、イヌもできる
03:55:10 ボノボの食物分配ではどのように優位劣位が認識されているか?
ボノボは順位関係は明確。オスの順位関係は母親の順位関係を反映する。しかし攻撃交渉が起こらないという意味で平和的だという意味(山本)
優劣ではなく群れに馴染んでいる/馴染んでいない関係なのかもしれない(山本)