中性粒子ビーム注入
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中性粒子ビーム注入(NBI, Neutral Beam Injection)は、核融合装置内のプラズマにエネルギーを供給するための技術です。この方法では、高エネルギーの中性粒子をビームとしてプラズマ内に注入し、プラズマ温度を上昇させると同時にプラズマの粒子密度や流れを制御することが可能です。これはトカマクやヘリカル型の核融合装置でよく使われ、核融合反応を持続させるために重要な役割を果たします。 中性粒子ビーム注入のプロセス
NBIのプロセスは以下のステップで構成されています: 1. イオン化と加速:
最初に、重水素やトリチウムといった核融合燃料ガスをイオン化し、正イオンを作ります。
このイオンを電場で加速して高エネルギー状態にし、ビームとして形成します。
2. 中性化:
加速されたイオンビームはそのままではプラズマに入りません。なぜなら、プラズマの磁場により軌道が曲げられてしまうためです。 そこで、イオンビームを中性化セル(一般には水素ガスや他の中性原子ガスの環境)を通過させて、イオンと電子が再結合して中性粒子になります。
中性化されたビームは電荷を持たないため、プラズマの磁場に影響されず、まっすぐにプラズマ内部に侵入することができます。 中性粒子ビーム注入の目的と効果
NBIの主な目的は、プラズマを高温化して核融合反応を維持・加速することです。以下のような効果が期待できます: プラズマ加熱: 中性粒子のエネルギーがプラズマ内に伝達されることで、プラズマ温度が上昇します。核融合反応には数千万度の高温が必要であり、これを達成するための加熱手段としてNBIが使われます。 電流駆動: トカマク装置などでは、プラズマ中に電流を流すことで磁場を生成し、プラズマを閉じ込めます。NBIは、特定の角度からビームを注入することで、プラズマ中に電流を発生させる「非誘導電流駆動」を行い、安定な閉じ込め状態を維持するのに役立ちます。 トルク供給: 中性粒子ビームがプラズマ内での流れを制御するトルク(回転力)を提供し、プラズマの安定性を向上させます。プラズマが回転することで、閉じ込めが強化され、不安定性の抑制につながります。 中性粒子ビーム注入の課題
高コスト: 高エネルギーで中性化した粒子を生成するには大規模な装置が必要で、コストがかかります。
エネルギー効率: イオンの中性化過程でエネルギー損失が発生するため、効率が課題となります。
装置の複雑さ: 高エネルギーイオンを生成し中性化する装置は複雑で、運用やメンテナンスに高度な技術が必要です。 NBIは、核融合炉のプラズマ制御やエネルギー供給において重要な技術であり、今後の改良によってさらに効率が上がれば、核融合発電の実用化に向けた大きな進展が期待されます。