ヘリカル
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核融合分野でいう「ヘリカル(helical)」とは、プラズマを閉じ込めるための磁場配置をらせん(螺旋)状に設計した装置・方式を指します。代表的な例として、大型ヘリカル装置(LHD: Large Helical Device) や ヘリオトロン(Heliotron)方式 が挙げられます。これらは大きく見れば「ステラレーター(Stellarator)」と呼ばれる磁場閉じ込め型核融合装置の一種ですが、その中でも特にコイルや磁場の形状を「ヘリカル(螺旋)」構造にしているのが特徴です。 1. ヘリカル装置(Helical Device)とは?
1.1 核融合における磁場閉じ込め方式
核融合実験装置には、大きく分けてトカマク(Tokamak)型とステラレーター(Stellarator)型という二つの主要な磁場閉じ込め方式があります。いずれも強力な磁力線で高温プラズマを閉じ込め、核融合反応を起こしやすくする狙いがあります。 トカマク型:ドーナツ状の真空容器に環状のコイルを配置し、さらにプラズマそのものに電流を流すことで磁場を形成する方式。軸対称(2次元的な回転対称)構造が中心。 ステラレーター型:外部コイルのみで磁場のねじれを作り出す方式。プラズマ電流に依存せずに閉じ込めが可能(長時間運転がしやすいとされる)が、コイル設計は複雑になりがち。 そのステラレーター型の中の一形態が「ヘリカル装置(ヘリオトロン含む)」です。螺旋状(らせん状)のコイルを用いて、プラズマを3次元的にねじれた磁力線で閉じ込める点が最大の特徴です。 1.2 代表的なヘリカル装置
大型ヘリカル装置(LHD: Large Helical Device) 場所:日本・岐阜県土岐市にある自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS: National Institute for Fusion Science) 特徴:世界最大級のステラレーター型核融合実験装置。2重の螺旋コイル(ヘリカルコイル)と3対のポロイダルコイルを組み合わせた複雑な構造をもつ。 目的:高温プラズマの長時間安定閉じ込め実験や、将来の核融合炉設計に向けた物理検証。 ヘリオトロン(Heliotron)型
原理:メインのヘリカルコイル(らせん状コイル)と補助コイルの組み合わせでプラズマを閉じ込める。トカマクのようにプラズマ電流を強く必要としない。 LHDはヘリオトロン型の発展形として建設されました。そのため「ヘリカル装置=ヘリオトロン系ステラレーター」と捉えることができます。 Stellaratorとヘリカル、ヘリオトロンの違いは以下を参照してください
1. 非軸対称(3次元的)磁場設計による安定性
トカマクではプラズマ電流が乱れたりすることで不安定性や突然の崩壊(ディスラプション)が起こりやすい。一方、ヘリカル装置は外部コイルが複雑かつ3次元的な磁場を生成するため、プラズマ電流に依存せず閉じ込めを実現でき、突発的な崩壊も起こりにくい。 2. 長時間運転(steady-state operation)の可能性
トカマクの場合、プラズマ電流を維持するために誘導電流や非誘導電流ドライブ装置が必要となる。ヘリカル装置はそもそもプラズマ電流に頼らず磁場を作るため、連続運転をしやすいという利点がある。 3. 安定で均質な磁場配置
ヘリカルコイルがプラズマを均一かつ連続的に取り囲むため、一部の領域だけ強い・弱いといった磁場の偏りが生じにくい(細かい調整は必要)。 3. ヘリカル型の課題・デメリット
1. コイル設計・製作の複雑さ
複数のコイルを3次元的に配置する必要があり、製作コストや組み立て精度の要求が高い。
2. 大型化に伴う設備投資
大きくすればするほど、より高い精度で大規模な超伝導コイルが必要となり、装置全体が巨額になる。 3. 真空容器や壁構造の複雑さ
コイルだけでなく、プラズマ容器自体が3次元的に歪な形状となるため、内部構造の冷却系・計測系も高度な設計・製作が求められる。 4. まとめ
核融合における「ヘリカル」とは、らせん状の磁場コイルや磁力線構造を用いてプラズマを閉じ込める装置・概念のことです。一般的なトカマクに比べると複雑なコイル構造を持ちますが、プラズマに大きな電流を流さなくても長時間安定して閉じ込められるというメリットがあります。日本の大型ヘリカル装置(LHD)などは、世界的にも重要な核融合研究の拠点となっており、将来的な核融合炉の設計や実現に向けたさまざまな物理研究が進められています。