NTプラズマにおけるI-mode、H-mode、L-modeの関係
#一般解説
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NTプラズマにおけるI-mode、H-mode、L-modeの関係
ASDEX Upgrade(AUG)トカマクでの負三角形形状(Negative Triangularity, NT)プラズマの研究から、I-mode、H-mode、L-modeの振る舞いに関して以下のような知見が得られています。
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1741-4326/ac8563
1. H-modeへの遷移が抑制されやすい(ELMフリー運転が可能)
不利な磁場配置(B×∇BドリフトがX点から離れる方向)では、H-modeへの遷移が難しいことが分かっています。
通常、H-mode遷移にはErが−15 kV/m以下になる必要がありますが、NTプラズマではErが−5 kV/m程度と浅いため、H-modeに入らないケースが多いです。
その結果、L-modeが維持される傾向が強いです。
有利な磁場配置ではタイプI ELMが発生しますが、不利な磁場配置ではH-mode遷移自体が抑制されることが多く、ELMフリー運転が可能になります。
2. I-modeの発現も難しい
I-modeが通常観測されるのは、Erが−8 kV/mから−15 kV/mの範囲です。
しかし、不利な磁場配置のNTプラズマでは、Erが−5 kV/m程度で浅いため、I-modeへの遷移も起こりにくいとされています。
I-modeはH-modeとは異なりELMが発生しないモードですが、エッジ温度ペデスタルが形成されるため、H-modeに次ぐ高い閉じ込め性能を持ちます。
NTプラズマではI-modeの特徴である弱いコヒーレントモード(WCM)が観測されていないため、NTにおけるI-modeの実現にはさらなる研究が必要です。
3. L-modeが維持される傾向が強い
NTプラズマはL-modeを維持しやすいという特徴があります。
高い補助加熱(NBIやECRHなど)を行っても、L-modeのまま維持されるケースが多いと報告されています。
通常の正三角形(PT)プラズマであれば、同じ加熱条件でH-modeに移行するはずですが、NTプラズマではErが浅いためH-modeに移行しません。
4. H-mode遷移を防ぐには「不利な磁場配置」が重要
NTプラズマでH-modeを避けるためには、不利な磁場配置が重要であることが示されています。
有利な磁場配置では、通常のPTプラズマと同様にH-modeに移行してしまい、タイプI ELMが発生します。
不利な配置では、H-mode遷移閾値が2倍になるため、L-modeが維持されます。
まとめ:NTプラズマでのモードの傾向
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プラズマモード NTプラズマでの特徴 遷移条件 課題
L-mode 維持されやすい Erが浅い(−5 kV/m程度) H-modeやI-modeへの移行が難しい
I-mode 発現が難しい Er ≈ −8 ~ −15 kV/m 不利な配置ではErが十分に負にならずWCMが観測されない
H-mode 遷移しにくい Er < −15 kV/m 不利な磁場配置ではErが浅くH-modeに入らない
最終的な見解
NTプラズマはELMフリーで安定したL-mode運転が可能である反面、I-modeやH-modeへの遷移が抑制されやすいことが示されています。
I-modeの特徴であるエッジ温度ペデスタルの形成は、NTプラズマではあまり見られず、I-modeの励起は難しい可能性があります。
ただし、不利な磁場配置と適切な加熱条件を調整することでI-modeが発現する可能性もあり、さらなる実験と解析が必要です。