道徳的判断は直観的
道徳的な判断は、危害、権利、正義などに対する関心の度合いを測定するなどといった、 純粋に理性的な働きではない。それは、動物が草原を移動し、さまざまな事象に引き寄せられたり、 それらから遠ざかったりする際に下す判断に似た、 突発的で無意識的なプロセスである。 つまり道徳的な判断のほとんどは、 〈象〉が下すのだ。社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト・位置1501
乳児は、誰が自分に好意的かをすぐに見分けられるという点については、容易に理解できるだろう。犬にでもできるのだから。しかし三人の発見によれば、 生後六か月の乳児は、人々が自分以外の人に対してどう振る舞っているのかを見て、 悪意のある人ではなく、 好意的な人への志向を発達させる。 つまり、 言語や思考の能力を発揮し始めるはるか以前から、 〈象〉 は道徳的な判断に似た何かを行ない始めているのだ。 サイコパスと乳児に関する発見を踏まえると、 道徳的な直観はいたって早い時期に発現し、 道徳の発達には必須であることがはっきりとわかる。 思考能力はそれよりもはるかに遅く出現し、 また、 直観をともなわない道徳的な思考は、 醜い結果を生む。社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト・位置1569