遊びにおける男女の性差
ごく幼い子どもたちの場合、 遊ぶといってもそれは互いに交流しながら遊ぶというよりはむしろ、同時に遊ぶというスタイルに近いので、 遊び仲間への好き嫌いはほとんどない。 しかし四、五歳になって心の理論を持ち始めると、子どもは明確に、 自分と同性の相手と遊びたがるようになる。 このような性区別はじつはもっと早い時期から現れており、 乳児は自分と同性の赤ちゃんのほうを異性の赤ちゃんよりも長い時間見つめているという結果が、いくつかの研究で報告されている。 二歳になると遊ぶときも、 異性の子どもから誘われたときより同性の子どもから誘われたときのほうが、 反応がいい。 プレスクールに行く頃には、 同性同士で遊びたいという気持ちがよりいっそう強くなる。 そして八、 九歳にもなれば、男子は男子同士、女子は女子同士で遊ぶのが普通になる。ある研究で小学生の子どもにアンケートをとったら、自身の友だちネットワークに異性の友だちが含まれていたのはわずか一一パーセントだった。 小学校の最終学年になるころには、男女で固まるこの傾向は、遊び仲間はもとより授業のプロジェクトで一緒に活動する相手にも及ぶ。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 386ページ 遊ぶときのおもちゃや、 社交スタイルに現れるこのような性差は、 文化化の産物だとよく言われる。 だがそれは考えすぎだろう。なぜなら同様の性差はサルにもあるからだ。 ジェリアン・アレクサンダーとメリッサ・ハインズは、カリフォルニア州の霊長類研究センターの大きな囲いの中で飼育されているアフリカのミドリザルの子どもの遊びを研究した。 するとオスは、事前に 「オスのおもちゃ」と定義したおもちゃ (ボール、 自動車のおもちゃなど、人間の男の子が好むおもちゃ)で遊ぶ時間がメスよりずっと長く、 メスは「メスのおもちゃ」と定義したおもちゃ(人形や類人猿のぬいぐるみなど、 人間の女の子が好むおもちゃ) で遊ぶ時間がオスより長かった。いっぽう「中性的なおもちゃ」 (本、犬のぬいぐるみ)で遊ぶ時間にオス・メスの差はなかった。 ちなみに、それぞれサルの順位序列とおもちゃに接触する頻度に相関性はなかったため、オスとメスの相対的優位性、つまりアクセスの差はまったくなかった。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 388ページ