行動経済学
もうひとつ、わたしの考えでは、わたしたちは不合理なだけでなく、「予想どおりに不合理」 だ。 つまり、 不合理性はいつも同じように起こり、 何度も繰り返される。 消費者であれ、 実業家であれ、 政策立案者であれ、 わたしたちがいかに予想どおりに不合理かを知ることは、よりよい決断をしたり、生活を改善したりするための出発点になる。予想通りに不合理 ダン・アリエリー• 18ページ ところが、本書でこれから見ていくように、 わたしたちはふつうの経済理論が想定するより、はるかに合理性を欠いている。そのうえ、わたしたちの不合理な行動はでたらめでも無分別でもない。 規則性があって、何度も繰り返してしまうため、予想もできる。 だとすれば、ふつうの経済学を修正し、 未検証の心理学という状態 (推論や、考察や、何より重要な実証的な研究による検証に堪えないことが多い) から抜けだすのが賢明ではないだろうか。これこそまさに、 行動経済学という新しい分野であり、 その小さな一端を担う本書の目指すところだ。予想通りに不合理 ダン・アリエリー・19ページ 経済学は、人がどのように行動すべきかではなく、 実際にどのように行動するかにもとづいているほうがはるかに理にかなっているのではないだろうか。 「はじめに」 で述べたように、この素朴な考えが行動経済学の基礎になっている。 人がいつも合理的に行動するわけではなく、誤った決断をすることも多いという (かなり直観的な)考えに着目した、 新しい学問分野だ。予想通りに不合理 ダン・アリエリー 385ページ ふつうの経済学とシェークスピアは、多くの点で人間性をより楽観的にとらえている。 どちらもわたしたちに無限の理性がそなわっていると仮定しているからだ。 同じ理屈で、 人間に不足があると認める行動経済学の見方は、多くの点でわたしたちがどれほど理想におよばないかを証明してみせるため、 より悲観的だ。 たしかに、 わたしたちみんなが、 個人の生活でも仕事でもつきあいでも不合理な決断をしつづけていると気づかされるのは、かなり気がめいる。 しかし、 それでも希望の光はある。 決断を誤るということは、 それを改善する余地があることを意味し、だからこそ、 これから説明する 「無料のランチ」のチャンスもあるのだ。予想通りに不合理 ダン・アリエリー 385ページ