自閉症の人はエンドルフィン受容体が少ない
ここにはいくつか、 自閉症の人の症状とよく似た点がある。 六章でも述べたように、 自閉症の人たちは、 社会的関係に関わる主要な認知スキルが欠けている。 だから彼らの大半は、 友だちがほとんど、 もしくはまったくいない。 さらに彼らのなかには、 身体的な接触を非常に不快に思い、苦痛とさえ感じる人たちもいる。 そんな彼らはまるで愛着尺度の低いほうの一番端に座っているかのようで、エンドルフィン受容体の密度、特に前頭葉での密度も非常に低いように見える。 最初に自閉症とエンドルフィン系は関係しているかもしれないという説を唱えたのは、ヤーク・パンクセップだが、 当時、 自閉症の専門家たちはこの説に懐疑的だった。 だが最近では、 自閉症にエンドルフィンが関連していることを示すエビデンスは増えてきているようだ。 最近ではルーシー・ペリシエたちもヤーク・パンクセップ同様、自閉症の背景にはエンドルフィン系の反応の低さがあるらしいと主張している。エンドルフィン受容体を持たないよう繁殖されたマウスの子は、母親と引き離されても普通の子マウスのように鳴くことをしない。 また、 成長してもメスの鳴き声に反応せず (普通のオスは必ず反応する)、 社会的交流への関心も低い。 さらに彼らには、自閉症の人の付随的特徴も数多く見られた。 たとえば、 攻撃性が高い、 不安感が強い、動きがぎこちない、けいれんを起こしやすい、 空間学習障害がある、 痛覚閾値が低い、 消化管の活動が乱れがち、といった特徴だ。 もちろん、 ヒトとマウスの行動の類似性を重視しすぎるのは危険だが、こういった特徴は自閉症の人の特徴と非常によく似ている。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 182ページ 自閉症の人たちに友達がほとんどまったくいないというのは偏見ではないのか?
ソフィー・スコットは、 笑いに関心を持った数少ない神経学者の一人であり、 自分と同様に笑いに関心を持っていた私に、スタンドアップコメディ (独りで行う漫談) をやってみないかと持ち掛けた張本人でもある (あの経験は一回でじゅうぶんだ)。 ソフィーたちのチームは、 精神異常行動がある、 または精神異常行動をとる危険があると診断された十代の少年たちに本物の笑い声を聞かせた場合、脳のある二つの領域の反応が正常な少年の脳と比べて著しく小さいことに気づいた。 その領域とは、 補足運動野と前頭だ。 後者の反応が小さいことは特に興味深かった。なぜならそこは、エンドルフィン系と関連している脳領域だからだ。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー・393ページ