肉食の気候変動への影響
ドイツ『デア・シュピーゲル』誌の「食肉と温暖化 —気候を直撃する肉牛 (Meats' Contribution to Global Warming: 'The Cow is a Climate Bomb')」は、牛によって排出されるメタンガスが二酸化炭素の二三倍の温室効果をもつと報告している (Schiessl & Schwägerl, 2008)。 Foodwatch (*)は、ドイツ人の平均的な肉食量を車の走行距離(BMW社 118 d 119g Co 2/km)に換算し、肉食の温室効果を紹介している。 極端な菜食主義者(ヴィーガン)の換算走行距離六二九kmに対し、 一般的肉食者は四七五八kmであり、 肉食者がヴィーガンの七倍以上の温室効果をもたらすことを示唆している。このことは、個人の食行動や食事パターンが、個人の健康維持や嗜好にとどまらず、 社会的影響力をもつことや、 特に肉食がイデオロギーとして扱われていることを示唆している。現代思想2022年6月号 特集=肉食主義を考える——ヴィーガニズム・培養肉・動物の権利…人間-動物関係を再考する ・コオロギは肉食のジレンマを解決するのか 大森美香 98ページ
ウシは、四つの胃でエサを反芻する。 その間に、四〇〇〇種類の微生物たちがエサを分解し、そこからゲップとしてメタンガスが放出されるが、このメタンガスが二酸化炭素の二五倍の温室効果があると言われ、 二酸化炭素に換算すると年間七五六万トン、 日本で走るバスが年間で排出する四一〇万トンと、タクシーが排出する二四八万トンの合計よりも多い。現代思想2022年6月号 特集=肉食主義を考える——ヴィーガニズム・培養肉・動物の権利…人間-動物関係を再考する ・培養肉についての考察 藤原辰史 257ページ
ちなみに、一頭分の飼料用トウモロコシ生産に必要な土地は日本の場合、平均で一○アールであるので、一頭につき、一〇メートル×一○メートルの土地が一〇個も必要になる。もっといえば、一頭の生育に必要な安全な淡水を「ヴァーチャル・ウォーター]」 と呼ぶが、 一二〇〇万キロ、つまり一万二〇〇○トンとなる。これは牛が飲む水だけではなく、 牛が食べた飼料を育てるのに必要な水も含まれる。現代思想2022年6月号 特集=肉食主義を考える——ヴィーガニズム・培養肉・動物の権利…人間-動物関係を再考する・培養肉についての考察 藤原辰史256ページ
培養肉に変えた場合。