性同一性障害
「性同一性障害」の名称は、 もう精神医学の領域で使われなくなっている。2022年1月から、世界保健機関(WHO)が出している 「国際疾病分類」の最新改訂版 (ICD-11) が有効になり、それまで「精神障害」のカテゴリーに含まれていた 「性同一性障害」という概念はなくなった。 最新版では「精神障害」とは別のカテゴリーである「性の健康に関連する状態」に移動して、名称も性別不合 (Gender Incongruence)に変わったんだ。 このカテゴリーの移動からわかるのは、 トランスジェンダーの人たちを、 ただそれだけで「疾患」 や「障害」として扱う時代は完全に終わりを告げたということ。 とはいえ、 依然として WHOの 「国際疾病分類」「性別不合」 が残っていることからもわかるように、 トランスの人たちが医療者たちと縁を切ったわけではない。 むしろ、 トランスの人たちが必要な医療的措置にアクセスしやすい状況を保つために、わざわざこうしたカテゴリーに移動させて、新しい言葉に置き換えたんだ。 ちなみに、 先ほど紹介したアメリカ精神医学会の DSMも、同じような発想から性別違和 (Gender Dysphoria) という言葉を残している。トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら高井ゆと里周司あきら 46ページ