完璧じゃない、あたしたち
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タイトルは「完璧ではない」という意味と「完璧でしょ?」という2つの意味があるみたい。
非常に器用で、いろんな文体を使ったり、SFっぽい作風もあったり、読んできたものの幅が広い作家さんなんだろうなと感じた。他方で書くものが「偏ってる」というか不器用さもあって、そのことを大変好ましく思った。
逸見 「色目?! 私、そんなことしてませんよ! 久保田さんもさっき店長に言ってくれたじゃないですか、『なに若いバイトにちょっかい出してんだこのゴミクズセクハラちんこ頭脂ハゲメタボ中年!』って......」完璧じゃない、あたしたち 王谷晶 p.204 2018年の作品みたいだけど、「ハゲ」とか「頭おかしい」のような表現が結構出てくる。もちろん作中人物はそういうことを言うような人間だというだけなのだが(ポリコレについてのスティーヴン・キングの発言参照)、言葉を使うこと自体がけしからんという人はきちんと王谷も取りしまってほしい。 家から死ぬほど近いというその一点のみで選んだバイト先、時給は安いし店長はハゲなのにロン毛という理解し難いヘアスタイルだったが(......)完璧じゃない、あたしたち 王谷晶 p.117 「頭、おかしいんじゃないですか」/「おかしかないよお。せっかく生きてきたんだから楽しくやろうよ」/「いい加減なlこと言わないでください。どこに逃げるっていうんですか。行く所なんか無いです。ここ以外に友達も親戚もいないんです」/「いいじゃん。誰も知ってる人のいない土地へ行こうじゃないか。行き着いた場所が居場所になるよ」/ 「......」/女子は黙って、ヘルメットを外した。ぼさぼさのショートボブの隙間から、けっこうでっかい円形脱毛症のミステリーサークルと、治りかけの青あざが見えた。完璧じゃない、あたしたち 王谷晶 p.126 ハゲ、ハゲ連発していたら、ここで「円形脱毛症」が出てきて、知らぬ間に相手を踏んでいた、って描写になってる。ハゲはバカにしてよくて円形脱毛症とは違うという意味なのかもしれないが、私はここはわざとハゲと何回か言わせてるんだと解釈してる。