人が読んでいるものを避ける
もう一点だけ、これは特に僕において顕著なことであり、 一般には理解されないと想像するけれど、参考のために書いておこう。 それは、人が読んでいるものを避ける、ということである。 みんなが読んでいるもの、売れていると宣伝されているもの、 どこかで紹介されたもの、 人からすすめられたものを読まない。書店でも、平積みされ、ポップが立っているような本は無視する。 僕が読むものは、できればまだ誰も読んでいない本であってほしい。 それはさすがに無理な話だが、 かぎりなくそれに近いものを読みたいのである。 そうすることで、 自分が得たものの価値が相対的に高まる。 大勢が得たものならば、もう僕が得なくても、社会に満ちているものといえる。 いずれ人からそれとなく伝わってくるだろうし、 また、 知っていることの優位さもなくなっている。読書の価値 / 森博嗣 77ページ