プロは文章を書き終えてから文章を書く
私には娘がいるのですが、 小学校の授業参観のとき、 親に感想文が求められたのでした。 300文字ほどの感想文でしたが、 学校に提出をするわけですから、 保護者はみなさん、 なかなかに苦しまれているようでした。 中には週末、何時間も使って、わずか300文字ほどの感想文を書かれていた人もいると聞きました。そんな中で、パパ友のひとりから、こんなふうに言われたのです。 「上阪さんは書く仕事をしているからこういうのを書くのもきっと早いんですよね」 はっきりとは口にしませんでしたが、 実際には3分かからず書き上げてしまっていたのでした。 なぜそんなに早く書けたか。 理由はシンプルで「素材」 を持っていたからです。もっといえば、 「素材」をスマホにメモしていたから。 事前に感想文の提出があることを聞いていたので、私は学校に着いてから、ずっと観察を続けていたのでした。 受付には、どのくらい人が並んでいるのか。保護者の様子はどうか。 下駄箱にはどんな準備がされているか。 教室の雰囲気はどうか。壁には何が貼られているか。 印象に残る掲示物はあるか。 授業をする先生の様子はどうか。 印象に残る言葉はあるか ......。 難しいことではありません。 あとで感想文を書くつもりで眺めていれば、 いろんなことが目にも耳にも入ってきます。 それを、せっせとスマホのメーラーの下書きに入れていくだけです。 こうして私のスマホには、感想文に求められた 300文字どころではない量の 「素材」 が収められていたのです。メモ活 / 上阪徹 ・ 267ページ