SECIモデルは、共感から始まる
「知」は、人の「想い」や「やる気」がないと生み出せない。
SECIモデルにおいて、「対話」を通して暗黙知を表出させていくが、この「対話」が上手にできないと、「表出化」は難しくなる。 つまり、「共感」というコンセプトが、「共同化」の核となる。
他者と「二人称」の関係、いわば「戦友」の関係を作れるかどうかがポイント
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組織においても、「知」を創造するのがマネジメントの本質だが、その基点になるのは「共感」できるかどうか。この「二人称」を確立できるかどうかがものすごく重要になってくる。
「共感」があって初めて、全身全霊で向き合う知的なぶつかりあい(知的コンバット)ができるようになる。 戦友になれるか?
背中を預けられる関係になれるか?
というのも、我々は一人一人が、それぞれの暗黙知で世界を見ている。 価値観、スキル、知識、経験などを通して、世界を見ている
そういったもの同士が共同化するためには、主観と主観を徹底的にぶつけあうしかない。
真剣勝負で何度もぶつけ合いながら、ようやく「こうとしかいえないよね」というコンセプト(概念)につながっていく。
このようなプロセスを経て、きちっとした概念へと発展し、言語化し、普遍化した「三人称」へと変換できる。これができない限りは、絶対にイノベーションは成功しない。
💡組織としての知を生み出す上で、相手の主観になりきった対話を重ねるのがスタートというのは、とても興味深い。知を生み出す上で、上下関係などなく、忖度なくお互いの意見を出し合うことが大事。否定しあっては思うように意見が言えないから、共感から始め、主語を1人称から2人称にし、膝を突き合わせて対話する。
具体例
SECIモデルを最初に採用した会社はエーザイです。エーザイの内藤さん(内藤晴夫代表執行役)が、SECIを実践するにはどうしたらよいのか?と、我々と勉強会などをしながら取り組まれました。エーザイが何をやったかというと、まずいわゆる「知創部」という部署を作りました。社内での「知」の創造を促進する部署です。エーザイは、カルチャーを変え、「hhc」というビジョンを実現するために「hhc活動」を始めました。世界中の社員が就業時間の1%を患者さんと共に過ごし、共体験をしなさい、と。エーザイは、「アリセプト®」でも知られるように認知症治療薬の開発に注力していますが、高齢者が多くいる病院での病棟実習を行っています。病棟に赴き、認知症患者さんやそのご家族に触れ合うんです。記憶の中でも特に短期記憶が失われる認知症患者の方からは、どのように世界が見えているのか。それを理解するには、その場に行って自らが共に感じなければならない、と。そして時間をかけて、患者さんやご家族と共に喜怒哀楽を経験することで、言葉になっていない「暗黙知」を理解します。時に、患者さんの死に直面することもありますが、その時は、ご家族の悲しみ・感覚も、共に体感する。そうすることで、真のニーズは何かと、経験から仮説を立て、形にしていかれました。
同じ「場」を共有し、「共感」、すなわち「共同化」から始められました。「SECIの一番のキーポイントは共同化だ」と最初に言ったのは、モデルを作った僕らではなく、内藤さんでした。