レネゲイドウィルスの歴史
レネゲイド――人類に、そして自然の摂理に反逆するモノ。そう名付けられたウィルスが世界に解き放たれたのは、約二十年前であると推測されている。
すべての始まり
未知のウィルスにより変貌した世界の誕生。その発端は、20年前の中東某国で起こった。アメリカの考古学者、ライアン・フィランダー率いる発掘隊が、この地で未知の遺跡を発見した。その遺跡は中東の古代文明を解き明かす鍵になると目され、人々の期待を大いに集めた。 だが、遺跡から発掘された遺産の数々や、調査で得られた研究資料が日の目をみることはなかった。それらを載せてアメリカに帰還するはずだった輸送機が、何者かの手によって撃墜されてしまったのである。
撃墜された輸送機に乗り込んでいた発掘隊の面々は、全員が行方不明となり、搭載されていた遺産や研究資料もすべて灰となった。だが、事件はこれで終わってはいなかったのだ。 未知のウィルスの拡散
撃墜された輸送機には、遺跡に封印されていた未知のウィルスが搭載されていたのだ。
そのウィルスは、輸送機の爆発でも死滅することなく成層圏にまで巻き上げられ、そして気流に乗って世界中に拡散していった。世界は人々の知らない間に、正体不明のウィルスによって侵蝕されていったのである。
輸送機撃墜事件から3年後。世界中に蔓延したこの未知のウィルスの影響が、少しずつ顕在化を始めた。
世界中で、この世の者とは思えない"怪物"の目撃例が増え、さらには常識では考えられない奇怪な事件が多発するようになり、各国の治安が急激に悪化しはじめたのである。
原因不明の発火や爆発、殺人にテロといった事件の急増に、各国政府は対応仕切ることができず、頭を悩ませた。
コードウェル博士の警告
そんな時に、各国政府に対し、極秘裏にある論文が送られた。論文には高名な生物学者であるアルフレッド・J・コードウェル博士の名が記されていた。コードウェル博士の論文は、未知のレトロウィルスと推測されるレネゲイドウィルスが中東での事件によって地上に拡散し、人類の多くが感染していること。そして、その中の一部の人間が発症することで、オーヴァードとなること、を伝えていた。 そして、その論文にはもうひとつの恐るべき事実が書かれていた。レネゲイドの侵蝕に耐えきれなかったものは、理性や良心を失い、衝動のままに行動する怪物ージャームになるというのだ。 ジャームとは、レネゲイドウィルスによる侵触によって人としての心を失ったものである。その心や、時には外見も、人間とはかけ離れたものとなる。コードウェル博士は、近年急激に増加する異様な犯罪、テロ行為の原因として、このジャームが関係していることも示唆していた。 しかし、コードウェル博士の論文の、その内容が公開されることはなかった。多くのオーヴァードやジャームはその外見から判別することはできない。その存在が知られれば・・・・・疑心暗鬼により社会秩序が崩壊し、魔女狩りじみた暴動が世界中で発生することを、誰もが予想したのだ。
人とレネゲイド
人の力をはるかに超えた怪物、ジャームによる犯罪、破壊行為。それに対抗することは、人類社会にとって困難なことに思われた。
さらにコードウェル博士は、悪意を持ったオーヴァードと、そしてジャームまでをもメンバーとする世界的なテロ組織の存在を指摘。世界的な混乱の陰に、意図的に人類社会に牙を剥く彼ら―ファルスハーツの存在があるとした。
ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク
コードウェル博士は論文に続けて、こう述べた。すなわち、自分もまたオーヴァードであり、そして自分たちのように理性を持ったオーヴァードが、ジャームから人類を守る―と。目強大な生命力を持ったジャームに対抗するには、都市部での行使が不可能なほどの大火力をもって当たらなければならない。世界の日常を壊さぬままに、ジャームに対峙できるのは、同じ力を持つオーヴァードだけである。
コードウェル博士は、同じくオーヴァードである仲間達と共に、ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク、UGNの結成を宣言。こうして、多くの人々が知らぬまま、世界の闇で、人類を―その日常を守る戦いが、はじまったのである。
トライブリードの出現
今から数ヶ月前のある日、全世界のオーヴァードが、同じひとつのイメージを受け取った。望郷の念......あるいは希望。微かに暖かなそれが何を意味するのかはわからず、ただ、その日からレネゲイドが変化した。
イメージの到来から一ヶ月間。ふたつのシンドロームを持つクロスブリードから、第三のシンドロームに目覚めるオーヴァードが続けて出現した。その現象は唐突に終わりを告げたものの、その後も、新たに目覚めるオーヴァードの中には、はじめからトライブリードとして覚醒する者が含まれるようになった。確かな原因はわかっていないが、きっかけとなった日に、FHが所有する宇宙ステーション、エンピレオが消滅したことが、何らかの関連を持つとも推測されている。