フィクションの標準理論を画像に適用する
🐪 前提
表象一般への拡張
標準理論によるフィクション/ノンフィクションの特徴づけは、なんらかの内容を持つ言語表現をどう使うかという観点からなされている。
この考えを一般化すれば、画像表象も含めた表象一般(少なくとも命題内容を持ちうる表象一般)に適用できる。
画像は命題を内容として持つか
画像が命題を表していると言えるかどうかは問題だが、少なくとも指示対象と帰属性質を持つタイプの画像については、問題なく命題(単称命題)を表していると言える。
🐪 画像をどう使うか
言語行為論の枠組みが適用できることの確認
発語内行為のいくつかは、言葉のかわりに画像をつかう(少なくとも画像と言葉を組み合わせる)かたちでも成り立つ。
発語内行為のいろいろな種類:
主張(証明写真、広告画像、肖像画、etc.)
命令(美容室でヘアカタログを見ながら「こういう髪型にしてください」)
質問(刑事が被疑者の写真を見せながら「この人を見かけませんでしたか?」)
etc.
画像を使った主張の場合は、それが描く内容について真偽を問うことが有意味である。
画像が嘘をつくケース
フィクションの標準理論を画像に適用する
フィクションとノンフィクションの違い:
画像的ノンフィクション:
画像を使って主張をする。
言い換えれば、描き手(あるいは画像の提示者)は、見る人にその画像の描写内容が真であると信じて(believe)もらおうという意図のもとで、その画像を提示する。
画像的フィクション:
画像を使って虚構構成的発話をする。
言い換えれば、描き手(あるいは画像の提示者)は、見る人にその画像の描写内容を想像(メイクビリーブ)してもらおうという意図のもとで、その画像を提示する。
(少なくとも原理的には)同一の画像であっても、使いかた次第でフィクションにもノンフィクションにもなりえる。
たとえば、ゴンブリッチによる絵の真偽の議論におけるジョージ・イネスの絵は、当時のラッカワナ谷の実際の風景を忠実に描いたものとして提示されればノンフィクション(主張)になるし、何らかの小説の挿絵として使えばフィクション(虚構構成的発話)になる。