ひらいて
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後ろ姿を見上げていると甘くて淡い、ほのかな酸味の桜色のお酒が、泡をしゅわしゅわ立てて胸に満ちてゆく。
一人称/高校生なのにたとえでお酒が出てくるのはさすがにちょっとなくない? こういうのだれも違和感もたないんだろうか
みんなは次から次へとファーストフードを口へ放り込む。一口飲み込むたびに、脂肪やニキビの原因が体内に蓄積されてゆくのを、まったく意識していない食べっぷり。自分の胃が四次元につながっているとでも思っているのだろうか。私はフライドポテト一本を前歯でかみ切りながら、ゆっくり咀嚼して味わう。もちろん私だってもっと食べたい。紙容器をそのまま口へ持っていき、ポテトをざらざら流し込んで頬張りたいし、ベーコンレタスバーガーもビッグマックもダブルチーズバーガーも、一つを三口ぐらいで片づけて、次から次へ包装紙を開け、かぶりつきたい。 でも少しでも食べ過ぎたと感じると、透明なジェル状の後悔が、身体の表面にたっぷりと垂れて皮膚を覆い、体温が下がってひやりとする。ポテトの二本めを食べ終わると、満足感が急激に同じ体積のまま後悔へ変質したから、ポテトに手を伸ばすのを止めた。
うわーこの気持ちわかるな。kana.iconの場合はダイエットとかじゃなくて普通に健康が、というか病気とかが気になるんだけど。
病気とか健康のことにすごく関心を持っている作品だよね 糖尿病のこととか、↑のファーストフードのこととか
ところで、女とキスをしたりいい雰囲気で抱き合うのが生理的に無理できもちわるいとか、鳥肌がたつとか書いてあるけど、これは取材か、あるいは著者が自分でそう思うってこと?kana.iconはそういうのないからよくわからないな……というか、あらゆる全ての場合に気持ち悪くなったり鳥肌がたったりもしないし(かといってそれがいいというわけでもなくて、フーンって感じ。家族とかパートナーならうれしい)、それが男女で違うとかはまったくないな。ヘテロの女はそうなの?それとも、ただの想像だからフィクションなの?
そのつもりで書いたのか知らんけど、セクシャリティとロマンティック傾向のズレとか食い違いを書いてるようにも見える、結局たとえにはロマンティック感情はあるけど主人公はセクシャリティを感じているようにはあまり見えなくてみゆきにはその逆?
この物語だと、他者との関わりは傷つけることによって起こる、というか傷つけることとニアリーイコールになっている
愛→たとえ
そのときどうか、傷ついてほしい。傷で私とつながってほしい。困惑するなんて大人の対応は要らない。腹を立て、幼稚な嫉妬にかられて、私につかみかかってくれないか。
愛と美雪
美雪を悲しませたのが悲しい。私にむかってあんなにも開かれていた、信頼を寄せていた心が、閉じてしまったのが、悲しい。
傷つけずに他者と繋がれる可能性を失った?
自分しか好きじゃない、なんでも自分の思い通りにしたいだけの人の笑顔だ。一度くらい、他人に向かって、おれに向かって、微笑みかけてみろよ
やっぱり~~!! またまた自己完結した人間の話、でも「つながりたい」 欲は猛烈にある、「つながりたいけどつながれない」 なのね...
たとえの傷つきやすさ、ヴァルネラビリティというのが、勝手にふるえてろのイチと重なる。かれらの外面に使われる形容自体はそれほど似ている感じでもないけど 1限の終わりごろ、たとえが来た。授業を邪魔しないように後ろのドアから入ってきた彼が、いつも通りの彼の席に収まったとき、教室が音を取り戻した。だれかが筆箱の中をいじる音、ノートをめくる音、先生の声と黒板を指で叩く音、あくびをかみ殺すため息。たとえが机の側面にかけたリュックからいつもの仕草で筆記用具や教科書を取り出すのを見ていると、時間が巻き戻り、高校生活は終わらず、少し退屈だけどこのままずっと続いてゆくと信じられる。
こういうシーンって映画にしたいかなあと思う。
「愛ちゃんも、たとえ君のこと心配しているよ。たとえ君のことを愛している。愛ちゃんにむかっても、ひらいてあげて」
「ひらいて」 →心をひらくという話、
集中して聞きたかったけど、でも私はまだすべての毛穴が目になって皮膚じゅうで見開きそうなほどの極度の興奮が、体内を駆けめぐっていて、それを押さえるのに必死だった。彼の父親を殴ったときの感触が、まだ指に残っている。柔らかい頬と、その奥にぐにゃりと硬い歯。 上がっていた息がおさまり、いくらか落ち着いて彼の家庭内の話に耳を傾けられるようになっても、同じくらい悲惨な話を毎日ニュースで聞いている気がして、あまり驚けなかった。美雪が涙のたまった目で深くうなずく度に、私の頭はぼんやりしてきて、人間的な同情から離れていった。興奮しているのに神経質な状態から抜け出せず、頭のなかで二匹の犬がけんかし始めて、その吠え声がうるさい。彼の話す声が遠のいてゆく。 私に理解できるのはいつも人の顔色ばかりうかがう彼が、絶望した瞳で、私と美雪の反応を気にしないくらい自らの過去に没入して話すさまが愛しいことと、彼を苦しめる存在は消したいということだけだ。
このあたりすごく一人称だなあと思う。たとえの家の事情がめっちゃくちゃ気になるし、なんで家が荒れ果てているのに父親は小綺麗なんだ?とか思うんだけど、主人公が一切話を聞いていないから最後まで我々もなにもよくわからないままおわる。
てか、主人公はほんとうになにか変化があったのかしら。相変わらず自分のことで精一杯というのか、自分以外に興味ないままのように思えるけど (だからこそたとえの話を神経に聞いてないんでしょっていう)
ミカのことにしろ美雪のことにしろ、
走って逃げたくなり、でもこらえて最後まで居続けた。度重なる衝撃で心底参り、いまにも倒れそうな美雪を支えているのは、彼女の隣に座る私だったから。ひそやかに触れ合っている腰から伝わる私の体温だったから。
結局のところは女性との関係性のほうが強い感じがする。
やっぱりやおいというか、GLなのでは???と思うんだけど。
ささやかなつながりを、いつもいつも求めている。そんな存在が無ければ、本当に困ったとき、一体なにがつっかえ棒になって、もう一度やり直そうと奮起させてくれるのだろう?
kana.icon
ラスト数ページというか、結末がちょっとよくわからなかった。なんかよくわからないけどたとえと美雪に無償の愛を向けられて呪いから解かれたんだろうか (イエスが人々にするように。) でも、授業中に男の子の席の近くにひざまずいて云々、別の教室に行って耳打ちして美雪が泣き出す、なんてのはシュールすぎて、一人称であるしほんとうは起こっていなかったこと? なんだか不思議なラストだった
別にそこまでもえ? と思うことは多くて、共感はしねえだろ、こんなやついるかとか思うんだけど、でも孤独とかつながりたいけどつながれないとかそういういつものあれと、何より、主人公がマジで自分のことしか考えていないのが気に入った。結局最後まで自分のことしか考えていないじゃないの。興味ないことには見向きもしないしなんかウケる。
傷つけること、支配することでしか人とつながれなかった主人公が、自分を「ひらく」 そして相手が自分にたいして「ひらかれる」 ことでつながることを素直に受け入れられるようになるのはとってもきれいな話だと思った。
傷つけることで孤独を癒やす、というのは、作家がいつも主人公の恋の相手に設定する男子が大抵傷つきやすい、ヴァルネラビリティを文字通り体現するかのような人物になっていることから、そしてその男の子を諦めてそうでない関係を築けるようになるという構造、勝手にふるえてろとかもそれ 健康や若さと病気に異常に執着したような描写が気になった。この作家はよく太宰治に影響を受けていると自分で話しているし、この物語のインスピレーション源も斜陽らしいんだが個人的には谷崎潤一郎的に思える。 実際、春琴抄がモチーフにされた会話が出てきたりもするし、この健康と病気にたいする執着が... あと個人的には、そう読まないひとのほうが多いかもしれないけど主人公はセクシュアリテイとロマンティック傾向が離れているようにみえて興味ぶかかった。一応、女と寝ることに生理的嫌悪感が云々とかって言いはするんだけどこれ、BLでよくあるパターンじゃね? っていう。作者スラッシャー説けっこう面白いと思う。
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