重症筋無力症
#筋疾患 #神経内科
日内変動がある眼瞼下垂・複視・易疲労性
【問診】
日内変動:午後に増悪する眼瞼下垂,疲労
易疲労性:1分間上方注視で両側眼瞼下垂増悪
【身体所見】
眼瞼下垂:上眼瞼挙筋の神経筋接合部
物が二重に見える(→外眼筋麻痺がある.動眼・滑車・外転のいずれかの脳神経麻痺を疑う.Horner症候群は否定できる)
全方向性複視,瞳孔正常(→外眼筋麻痺)
水分を慌てて飲むと鼻に逆流する(→軟口蓋麻痺がある)
頸部・四肢近位筋の筋力低下(→神経・筋接合部疾患あるいは筋疾患が疑われる)
【検査】
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるエドロホニウム(テンシロン)の投与で一過性に症状が改善する.
誘発筋電図:振幅漸減(waning)
抗アセチルコリン受容体抗体
頭部MRIで異常は認めなかった(→内頸動脈瘤を含めて脳幹〜海綿静脈洞〜眼窩内疾患は否定的である)
胸部造影CTで胸腺腫
https://scrapbox.io/files/6811dbb7f5923446c5f16be1.jpg
【治療】
胸腺腫あれば拡大胸腺摘出術
ステロイド
コリンエステラーゼ阻害薬
免疫抑制薬
ガンマグロブリン
■重症筋無力症を増悪させる薬剤don't
◆覚え方:ポ ン ペ イ(イタリアの史跡)のジ プ シーア キ コ
ポ:ポリミキシンB
ペ:D-ペニシラミン
ジ:ジアゼパム
プ:プロカインアミド
ア:アミノグリコシド系抗菌薬
キ:キニジン
コ:交感神経遮断薬,特にβ-blocker
【クリーゼ】
急激な筋力低下の増悪で嚥下,構音,呼吸に障害をきたした状態
バイタルサインの安定化が最優先
【初期検査】
感染症の診断のための各種検体培養(細菌が増殖するのに時間がかかる)
抗アセチルコリン受容体抗体価測定(検体検査に一定の時間がかかる)
甲状腺機能スクリーニング検査(FT3/FT4/TSH.重症筋無力症には甲状腺機能異常を伴うことがある)
<重症筋無力症クリーゼ>
感染症やストレス,妊娠を契機にクリーゼに陥ることが多い.
<コリン作動性クリーゼ>
抗コリンエステラーゼ薬の過剰投与によって急性に生じる呼吸困難である.抗コリンエステラーゼ薬がムスカリン性ACh受容体のコリンエステラーゼも阻害することにより,平滑筋や分泌腺の活動が異常に亢進して,気道分泌過多,気管支攣縮などが起こり,呼吸困難に陥る.コリン過多による症状(徐脈,縮瞳,発汗過多など)が示唆された場合には,コリン作動性クリーゼを疑い,硫酸アトロピンを用いる.