急性心筋炎
#循環器疾患
急性心筋炎はウイルスなどによる心筋の炎症が主病態である.
①先行する感冒様症状や下痢などの感染徴候
②急激な左室機能低下による心不全症状
③心筋の炎症による心筋逸脱酵素上昇
④症例にもよるが,1/3の症例では,心筋炎症状改善後,比較的短期間に左室機能が改善する
【問診】
若年(→急性、炎症性、遺伝性
感冒様症状が先行,消化器症状
呼吸困難が出現(→心不全あるいは肺疾患
食欲低下、倦怠感、ふらつき
胸痛なし
既往歴、生活歴および家族歴に特記すべきことはない.妊娠歴はない.
【身体所見】
意識は清明
表情は苦悶様.(→ショックを示唆
体温36.8℃.
脈拍92/分,整.
血圧72/48mmHg.(→ショックを示唆
呼吸数36/分.SpO2 82%(room air).(→心不全を示唆
四肢末梢の冷感を認める.口唇にチアノーゼを認める.(→ショックを示唆
頸静脈の怒張を認める.心音にⅢ音とⅣ音とを聴取する.呼吸音は両側でwheezesとcoarse cracklesとを聴取する.(→心不全を示唆、肺うっ血による低酸素血症
腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.
血液所見:赤血球482万,Hb 14.1g/dL,Ht 41%,白血球14,200,血小板17万.
血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL,アルブミン3.8g/dL,総ビリルビン1.1mg/dL(0.2~1.1 mg/dL),
AST 519U/L,ALT 366U/L,LD 983U/L(基準176〜353),CK 222U/L(基準30〜140)尿素窒素23mg/dL,クレアチニン1.0mg/dL,血糖199mg/dL,Na 128mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 99mEq/L.CRP 2.1mg/dL.心筋トロポニンT陽性.(→急性心筋梗塞よりも急性心筋炎を示唆する(炎症反応および心筋逸脱酵素上昇)心筋の壊死による(AST 2,324U/L,ALT 2,532U/L,LD 3,292U/L,CK 6,064U/L)
動脈血ガス分析(room air):pH 7.32,PaCO2 20Torr,PaO2 55Torr,HCO3- 10mEq/L.(→急性代謝性アシドーシス
【検査】
X線
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心電図:ST-T異常や伝導障害、重症例では心不全を合併→奔馬調律などの心不全所見を伴う。いかなる心電図変化も生じる可能性がある
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B:Ⅱ,Ⅲ,aVFでST上昇を認める.QRS幅の拡大を認める
心エコー:壁は肥厚(炎症による浮腫のため)
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C:図(Mモード)において,収縮期(a)および拡張期(b)における左室内腔径の差が小さく,左室駆出率は著しく低下している.
左室拡張末期径50mm(正常は40mm以内),左室駆出率は20%(正常は50〜75%)(→左室収縮能の著しい低下)
完全房室ブロック(→刺激伝導系の障害
冠動脈造影:狭窄や閉塞を認めないため,急性心筋梗塞の可能性は極めて低い.