宗教を知る
ビジネスパーソンが「宗教」を勉強することは役に立つ。それに面白い。
役に立つ、という側面においては以下の三つの切り口があると思う。
一つは、海外赴任が決まった、あるいは、外国人の部下ができたなどの場合に。宗教的な背景を知ることは、相互理解の役に立つ。
次に、組織文化、特に凝集性のある組織文化を作りたい、という際に。宗教団体の運営は組織運営のヒントに溢れている。
最後に、日本企業の組織原理、海外企業の組織原理あるいは、勤労倫理の違いの根底を知りたい、と考える場合に。宗教理解は大いなる補助線となる。自分の仕事が海外と直接関係がなかったとしても、自分の特徴を客観的に理解するためには、異なる文化を知ることが役に立つ。
最初から順に「即物的」→「抽象的」になるかもしれない。ただし、一つ目と三つ目は個別の宗教そのものを知らないといけない、という点で共通している。個別宗教の教義を詳しく知る、ということよりも、それらが思考や行動に与えている影響を知る、ことが重要だ。
上記の観点から、「組織運営に役立てる」「個々の宗教を理解する」という二つの系統で、参考となる文献を整理してみた。
宗教団体の運営を、組織文化浸透に応用
日本を代表する経営者、松下幸之助が天理教に組織運営のヒントを得たというのは有名な話だ。昔から、組織づくりを考える際に、宗教団体の運営は参考にされてきたようだ。経営者の立場からの分かりやすい、比較的最近の記事が以下だ。 さらに、こうしたノウハウを体系化?した「伝説の奇書」(良い意味)が、以下の本。少なからぬ経営者がこっそり読んでいると私は睨んでいる。
https://gyazo.com/15f9dca1d9d9f36660ec8ae8781a165e
宗教についてではないものの、「組織文化と経営」についての最近の良書が以下。実際、この以下の本で示唆されていることの幾つかは、上掲の完全教祖マニュアルで既に言われてることと重なっている。宗教社会学というか文化人類学の知見は重なるのだ。
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個々の宗教そのものを勉強する
私はは宗教社会学は、橋爪大三郎先生から勉強した。このため、橋爪先生の著書、または橋爪先生の師である小室直樹先生の著書を推薦したくなる。特に「一神教」についてはこのお二人による解説は非常に分かりやすい。ただし、このお二方以外にも平易な入門書は沢山ある。
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資本主義とキリスト教は切っても切り離せないため、キリスト強については深く知っておいた方が良いと思う。
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そもそも世界最大のベストセラー「聖書」は、グローバリゼーション下を生きる上では一度は必ず読んでおいた方が良いと思うのだが、現物を読むのはそれなりにしんどいことも事実なので以下のシリーズがお勧め。
ただ、僕はクリスチャンではないけれど、30代に聖書を買って、それ以降時々読んでいる(依然として、とても難しい)
https://gyazo.com/f8a542a3c2421d6fda575edeaf299d1c
さて、一通りの宗教知識を供えた上で、経営学と組織論、労働法関連の知識(ジョブ型、メンバーシップ型等々)を掛け合わせて考えていくと、色々な仮説が産まれてくる。なぜ会社と個人の関係、CEOの社内の位置付け、経営ビジョンの位置付け、ダイバーシティの考え方、などが日本と世界で異なるのか、などなど。(必要な知識量は結構多いので、コツコツ積み上げて数年間は掛かる)
例えば、アップル関連のノンフィクションで共通して描写されるスティーブ・ジョブズの独裁的なマネジメント実態を読むにつけ「これは旧約聖書の神だな」と思いながら理解すると非常にしっくりくるのである。(ジョブズ自身は禅に傾倒していたのだが、、それはまた別の話) (余談)
さらに、宗教知識があると、欧米の映画・音楽といったエンターテイメントの理解が深まり、2倍楽しい。こういった得もあるので、宗教を学ぶことをお勧めしたい
僕は、日本で書籍を中心に宗教の勉強をかなりした後に、滞米の機会を得た。このため、街にある教会を回って宗派ごとの違いを感じることができて、何倍もアメリカを楽しむことができた。なかでも、2016年の晩秋、トランプ氏の当選決定直後に、住居近所にあったユニテリアン・ユニヴァーサリズム教会の日曜礼拝にフラっと一人で参加させていただいたことは人生の思い出である 2020/8/9
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