基本情報源・覚書
基本情報源
Christopher Priest – author of The Prestige, The Separation and the story collection Episodes https://christopher-priest.co.uk/
著者サイト。ブログと自作紹介、二流を自負する作品群の個人販売。
クリストファー・プリースト(Christopher Priest) - 翻訳作品集成 https://ameqlist.com/sfp/priest.htm
邦訳書誌情報リスト。
Christopher Priest (novelist) - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Christopher_Priest_(novelist)
その他
https://booth.pm/ja/items/4671781
クリストファー・プリーストひみつぶっく。蛸井潔さんによるファンジン。イグジステンズ以外の邦訳作品についてのレビューを掲載し、特に双生児について精緻な分析を加えられている。
http://honyakumystery.jp/1380579822
最良の紹介者である古沢さんによる紹介。
https://www.locusmag.com/2006/Issues/06Priest.html
ローカス誌に載った紹介。
http://www.isfdb.org/cgi-bin/ea.cgi?Christopher_Priest
国際 SF データベースのプリーストのページ。
http://www.infinityplus.co.uk/nonfiction/intcpriest.htm
Infinity Plus というサイトに載ったインタビュー。
https://gyazo.com/b88815e090204cf7792853a41b9b8c6d
「本物のSFファンはプリーストを読まない」 https://twitter.com/nzm/status/869496411057934337
Cheap Truth 3 についてはスキャンデータもアップされている http://fanac.org/fanzines/Cheap_Truth/Cheap_Truth03-01.html
中身はベイリー礼賛だが、主流文学寄りの SF に対する批判ということで確かにアンチプリーストっぽさはある。
小説の奇術師、クリストファープリースト
小説の世界は現実ではないのだから、作者はその気になれば魔法を使うことができる。
だけどプリーストはけして魔法を使わない。物理世界の奇術師が物理的に可能な手段によってのみ幻惑を達成するように、プリーストもやはりあくまで小説内論理とフェアネスにのっとった上で、
既存作品の徹底的な換骨奪胎
独自に研究してきたジレンマと記憶違いのアート
もって生まれたひとさじの奇想
によって、読者をあのプリースト感覚とでも呼ぶしかない感覚へと導くのだ。
プリーストがどういうトリックを使っているのかを解き明かすことはできるはずだ。
それは当然、幻惑そのものの説明にはならない。そもそも、説明できるようなものは幻惑とは呼べない。
フェアネス
プリーストは、幻覚を出すときには必ず何らかのエクスキューズを先に出す。
拘束条件が極端に少ないために結論を絞れないような作品(ウルフ「アメリカの七夜」みたいな)はあまり作らない。
レビューについて
最初にはっきり主張しておきたいことは、(特に中期から後期の)プリースト作品については、前説やレビューのたぐいをできるだけ読まずに触れるのが理想だろうということだ。
己の判断能力だけを信じ、はたまた疑いながら、彼が仕掛けた幻惑の森に注意深くわけいっていくというのが最高だと僕は思う(これは訳者の古沢氏の言からの受け売りだ)。
だから既読者だけを相手にしたいけど、そうもいかないので本ページでは簡単な内容紹介を加える。
おまけとして、プリーストのジャンル意識などについて
SFに対する姿勢
既存の科学的知見からの外挿で話を作らない。
要は反ガーンズバック。親バラード。
結果としてこれが、賞味期限の長さにつながっている。
典型的な通俗SFを憎んでいるように見える。
例えば、スターウォーズは嫌いとのこと。
主流文学との距離感
アンナ・カヴァン『氷』に寄せた序文でスリップストリーム文学を語っている。
トリッキーなことがまるでできないタイプのメインストリーム作家は嫌いに見える。
現代SFのみならず、現代英国小説に対しても辛口の批評を書き、とりわけイアン・マキューアンの『贖罪』における盗作まがいの手口を激しく攻撃し、ブッカー賞受賞作であるジュリアン・バーンズの『終わりの感覚』についても「能力はあるのにこれまで一度もまともな小説を書いたことがない」と手厳しいプリーストが、『時間のないホテル』については「これぞバラード以降の世界のヴィジョンというべきものを初めて実現させた小説」と手放しで褒めちぎっているのだから、ぜひ読まなくてはと思ったわけだ。https://web.archive.org/web/20171008160714/http://www.webmysteries.jp:80/sf/wakashima0703.html
回顧的側面
ニューウェイブの主要作家はけっこう好きで、それらを換骨奪胎することに心をくだいてきたようだ。
キース・ロバーツ『パヴァーヌ』とか、オールディズ『寄港地のない船』とか
というか、本人自身が遅れてきたニューウェイブ作家なのだ。最後の現役ニューウェイブ作家と呼んでもよいかも
イギリスSFの古典(ウェルズ、ウィンダムとか)を強く意識して、それらをアップデートすることに関心を寄せている。
唯心論的 H. G. ウェルズを目指しているのではないかと思うことがある。
『透明人間』『タイムマシン』『宇宙戦争』など。
『夢幻諸島から』はポストコロニアル文学としても読める(?)。
かつてイギリスにとって植民地は幻想文学の庭であった。