双生児
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文庫判 368ページ
定価 900円+税
入手難度は低い。
五九歳。WWⅡ欧州戦線史の謎にとりくんだ傑作
歴史改変SF(このジャンルの完成形のひとつとして、プリーストはキース・ロバーツ『パヴァーヌ』の名前を挙げている)の換骨奪胎に挑んで成功させた傑作だ。
この作家は歴史改変モチーフの切れ端を複数回自作に取り入れてきた(たとえば『伝授者』『ドリーム・マシン』)が、本格的に歴史改変に取り組んだのはおそらくこの長編がはじめて。
ルドルフ・ヘスの替え玉とチャーチルの替え玉、そして双子として生を受けたふたりのJ・L・ソウヤー――同じ(ように見える)人間がふたりもいると、読者は混乱し世界線は分岐する。
プリーストは改変歴史SFの結構を利用して、めいっぱい多義性をふくらませて可能性の網を編む。
プリースト遺伝学?
一卵性双生児のいずれかががヒロインとベッドインするかという問題が、本作ではひとつの焦点になるのだが、一卵性双生児から得られる配偶子は一定確率で同じ遺伝型を持ちうるという事実がポイントなのではないかと評者は睨んでいる。
一度分岐した世界線が偶然に収束することは可能なのではないかということだ。
大森望による解説で言及されてるガーディアンの記事
出発点となった問題意識がいかなるものかを知ることができる。
蛸井潔さんの分析
取材記録であり参考文献リストでもある戦争読書録も重要なテキスト。