生物個体と株式会社のアナロジー
株式
遺伝子=株主
遺伝子は減数分裂が"フェア" (エージェントによる意図的な操作が不可能) な限り、個体内の各遺伝子はみんな同一の出口から出るというインセンティブを共有する。(運命共同体である)
「同一の出口から出る」というのは会社で言うと、配当が一律にすべての株主に対して分配されることに対応する。
個体が会社なら、各遺伝子は1/2の株式を保有する。会社全体の業績に合った役員を選任するのが個々の利益になる。
(受精卵になるのは精子の場合1/2よりはるかに小さいが、1/2の株式という表現に問題はないか?)
意図的な操作 = マイオティックドライブ
しかし、ミームの「生殖」は減数分裂のようにフェアでないし同一の出口からみんな出るわけでもない。他のミームに協力せず自分だけを複製させることができる。だから会社全体の業績を犠牲にしてレントシーキング/フリーライド的に役員を選定できる ミームと遺伝子の違いは、前者は個体のような安定した協力の単位を形成しない点にある
役員
遺伝子の乗り物(ビークル)に対応。
配当
生殖が配当に対応する。
生殖の配当は全遺伝子が入る可能性を1/2で持つため、フェアである。
本書のここまでの記述は「個体は包括適応度最大化に向けて自然淘汰を受ける」という前提を暗黙裏に置いていた.これはPhenotypic Gambitをとる行動生態学の伝統的な方法であり,個体内にある遺伝子たちは共通の運命をもつので協力するはずだという「遺伝子の議会」の考えに基づいている.
この例では遺伝子の議会は性比について異なる政策を好む政党に分かれることになる.X染色体党,常染色体党,ミトコンドリア党は,Y染色体党に対抗して,メスに傾いた性比を実現するための同盟を組むだろう.しかしこの3党も正確な望ましい性比については意見を異にする.性にかかる政治は減数分裂の議会ルールを根本的に危うくしうるのだ.