「新反動主義」Part.5: パッチワーク 〜競争的ガバナンスの観点から
from カーティス・ヤーヴィンの「新反動主義」――王制主義リバタリアンとは何か
「新反動主義」Part. 4: 先駆・影響
#新反動主義 #リバタリアニズム
キーワード: ティボーモデル(ティブーモデル)、地価最大化モデル、私有コミュニティ、地方財政論、地方公共財、クラブ財、足による投票
カーティス・ヤーヴィンの提唱するパッチワークという国際秩序では、
主権を持った株式会社 (「新反動主義」Part 2 〜 ネオカメラリズム) たちが支配する都市国家がたくさんある。
それぞれの都市国家は住民を獲得すべく競争を行う。
参考文献:
Unqualified Reservations: Patchwork: a positive vision (part 1)
Patchwork 2: profit strategies for our new corporate overlords
Tiebout Model
というものによれば住民獲得競争する地方自治体は (一定の仮定のもとで) 公共財の提供にともなうフリーライダー問題を解決でき、十分な公共財を提供できるようになるらしい。
Charles M. Tiebout "A Pure Theory of Local Expenditures"
Tiebout formalizes the conditions under which exit possibilities lead to states becoming similar to corporations.
Tiebout は、国外離脱できるという条件下で国家が企業と似たようになる条件を形式化した。
Posted by: MQ on April 23, 2007 8:22 PM 2blowhards.com: The Mencius Vision
Tiebout model で最適な公共財が提供できる前提 (英語版Wikipediaより抜粋: )
都市間の移動にコストが無いこと
そんな仮定を置いていいなら、民営の水道にだって (地域ごとに違う業者なら) 競争が働くと言っていい
完全情報
選べる選択肢となる都市が十分にあること
通勤の問題がないこと
しかしTieboutの結論はいくつかの仮定に基づいている. そのうち厳しい仮定は, すべての個人は株式の配当によって生計を立て, 居住地の選択は就業地とは独立にできることである. この意味で, Tieboutモデルがあてはまりそうなのは, ほとんどの住民が中心都市で働く, 大都市圏の中の郊外のコミュニティの形成といえる.
佐々木公明 "地方公共財をめぐる諸問題"
これは現実的じゃない仮定ですね〜
VR/ARなどによりリモートワークが完全に普及していれば成立するかもしれない
公共財が、ある都市から別の都市へスピルオーバーしないこと
スピルオーバーする場合、その公共財は過小供給になる。
このように地域に固有の公共財は、地方公共財と呼ばれるらしい。
クラブ財に近い?
国防とか、科学助成とかは無理 (というか過小供給) ってことね。
最適な都市のサイズが存在すること: 規模の経済
都市は最適なサイズを追求すること
都市は合理的であり、公共悪的消費者を排除すること
都市の金銭的魅力は家の値段という形で現金化できること。家の値段がそこに住むコストとベネフィットを反映すること
問題:
固定資産税: 固定資産税がある場合、豊かな人が公共財を払ってくれるため、貧しい人が豊かな人を追っかける状態が発生する
固定資産税無い場合、全員が同じ税率になること
規模の経済性: 都市は強い規模の経済性を持つもの (国防など) を供給できない。
ソース: Wikipedia: Tiebout model
Tiebout Was Wrong, But Why? - by Bryan Caplan - Bet On It
Why No Anarcho-Capitalism? - by Arnold Kling - In My Tribe
しかしTiebout model の問題として、不動産を持っている地主は固定資産税 (property tax) から逃げられない (売ろうにも、値段が下がってしまう) という問題があるらしい:
Bryan Caplan "Standing Tiebout on his head: Tax capitalization and the monopoly power of local governments" (アブストしか読んでない)
この問題は固定資産税 (property tax) を主な税収元にしようと考えていた (Chapter 1: A Positive Vision | Patchwork: A Political System for the 21st Century | Unqualified Reservations by Mencius Moldbug) ヤーヴィンにとっては大きな問題になるだろう
地価最大化モデル
ヤーヴィンは固定資産税 (Harberger Tax - Wikipedia) をネオカメラリズム政府の財源として提案している。そうすると、政府は地価が上がれば上がるほど税収が上がるので、支配下の地域の地価の総和を最大化するような行動を取ることになるだろう。
ジョージズムと新反動主義の融合。Georeactionary。
Tieboutの住民獲得競争と似たものかと思ったけど、『基礎から学ぶ財政学』p.184 にはティボーモデルと地方自治体の地価最大化モデルは別のモデルとして書いてある。
地方自治体は地方公共財を提供する。公共財の便益の分そこに引っ越したい人が増えて地価が上がり、税収も上がる。一方、公共財の費用として使う分、固定資産税が上がり、その分土地の需要減により地価が下がる。それにより、地価最大化行動をするときに供給される公共財の量は限界費用と限界便益が一致する、社会的に効率的な量、らしい (『基礎から学ぶ財政学』p.184 より)
これが一番強力なネオカメラリズムの擁護論なのでは?
公共財提供による需要増が、税率アップによる需要減を上回る限り公共財を提供し続けるってことだよね
地価を最大化というのと、地価から来る税収を最大化するっていうのは違う気がするけど (税率が100%ではないなら)
税率100%と考えてるのでは?
つまり、こういうことか:
もし土地の価値のうち、土地の上にある建物とかの価値を無視すれば、土地の価値の上昇はすべて政府の供給する公共財の便益で説明されるよね (――という単純化をしてみよう)。
つまり、公共財1単位からの社会的便益
= 人々が公共財1単位増やすために追加で支払ってもいいと考える金額の総和
= 公共財1単位増やしたときの地域内の全土地の値段アップ額の総和
ここの変形は、公共財の便益が完全に地価に資本化 (反映) されると仮定した場合の話っぽい
で、地方自治体間の移住コストがゼロという仮定だと、公共財の便益は完全に地価に資本化されるらしい。ソースはChatGPT。
=政府の税収増 (固定資産税100%の場合)
→その場合、公共財からの便益が完全に税収に内部化されるから、公共財が持つ正の外部性が全くなくなるよね
→だから限界費用=限界便益の点で政府収益最大化する、
ってことか。
具体的に言うと:
地方自治体が、公園を100万円かけてもう1個作れるとしよう。そのとき、作った場合の地域内の全土地の値段上昇額の総和が100万円以上なら、地方自治体は公園をもう1個作るはずだ。そして、未満なら、作らないはずだ。
地方自治体が公園の生産をちょうどストップするのは、「公園をもう1個作るときの費用」と、「公園をもう1個作った場合の周辺の全土地の値段上昇の総和額」が一致する点!
土地の価格についてプライスメイカーなら、地代の価格統制を行うとかで、価格をつりあげる (開発しても売れない場合が生じてNIMBY化) とかはないのかなあ
固定資産税の場合と、他の税の場合とでどう違うんだろう?
というか上のBryan Caplan の Tiebout モデル批判とはどう整合するんだろう…
移住コストが少ない、ということはどちらのモデルでも前提としている。
「地価の資本化仮説」
地方財政理論には公共サービスや固定資産税は地価に帰着するという資本化仮説があり、これに基づく実証分析は多い。
地方財政の資本化による地価の地域差に関する分析
John Yinger "Capitalization and the Theory of Local Public Finance | Journal of Political Economy: Vol 90, No 5"
The Tiebout literature is incomplete, this paper argues, because it has not fully accounted for the capitalization of local fiscal variables into house values.
ティボーモデルは財政変数の土地の現在の価格への影響を考慮していない点で不十分?
ティボーモデルのようにそこに現在居る住人の払う税からの収益を得ようとするという動機があるだけではなく、地価最大化モデルではそこに引っ越して住みたい潜在的な住民を増やすことで
需要増
→不動産の値段増
→ 固定資産税からの収入を上げる
ことができるってことかな
土地を買うからって住むとは限らないか。とにかく何かしらの理由で土地がほしい人を増やすって感じだね
土地を観光に使うか、工場を建てるとか、とにかくなんでも、儲かる使い方ができるなら土地の値段は上がる
もし奴隷労働が儲かるなら、その土地内で奴隷労働を許したほうが土地の値段が上がるということになりかねない?
土地の値段は土地の所有者にとって持つ価値から決まるわけだから、土地内では土地所有者が絶対権力を持つということを保証するというふうにしたら領土内の土地の値段が最も上がるのでは?
封建制?
まず絶対権力者を考え、その主体が何をするかを考えていたのだけど、「中身に絶対権力者を作る」という再帰的な回答になってしまった。いったいいつまで絶対権力者が中身に絶対権力者を作るというサイクルが続くのか。
政府は安全を保証したほうが、土地の需要は増え、値段が上がるだろう
ヤーヴィンが、ネオカメラリズム政府は不動産ビジネスであり、そこの資産価値を高めるインセンティブを持つ、っていってたのはこういうことか
私たちの論理は、治安維持された不動産は最も古く、最も重要な資本形態であるということです。つまり、それは生産的な資産です。生産的な資産を管理する責任ある効果的な方法は 1 つしかありません。それは、利益を上げることです。利益を最大化するには、資産の価格を最大化する必要があります。主権管轄区域の価格を最大化するには、その管轄区域内の不動産の価格を最大化する必要があります。不動産価格を最大化するには、近隣地域の魅力を最大化する必要があります。近隣地域の魅力を最大化するには、その地域の生活の質を最大化する必要があります。生活の質を最大化することが、良い政府の目標です。したがって、責任ある効果的な政府は、主権資本主義、つまり新官房主義によって最もよく達成されます。
Chapter XII: What Is to Be Done? | An Open Letter to Open-Minded Progressives | Unqualified Reservations by Mencius Moldbug
Sonstelie, J. C., & Portney, P. R. (1978) "Profit maximizing communities and the theory of local public expenditure"
$ 地代の総和 - 費用 を最大化する利潤追求コミュニティの公的サービス供給量と家の数はパレート効率的になる
不動産デベロッパーによる都市開発みたいなのを参照するといいのでは
地方財政論、地方公共財
ティボーモデル、地価最大化モデル、みたいなら辺は地方財政学 (local public finance) の分野になってくるらしいけど、図書館で地方財政学ってジャンルに†暗黒啓蒙†とかあったらおもしろいよね
暗黒啓蒙と地方財政論、暗黒の地方財政論
すごい黒字っぽくて縁起が良い
暗黒啓蒙で町おこし👾👾
地方公共財の理論 公共経済論I no.2 by 麻生 良文
スティグリッツのヘンリー・ジョージ定理
地方財政論-講義ノート(2019) - 開講科目 | 佐藤 主光 (Motohiro Sato) Website
https://www.youtube.com/watch?v=09lU9l8zYtw&t=0s
https://www.youtube.com/watch?v=o8ewuKCpZp0
政府観による住民獲得競争への考えの違い
リヴァイアサン仮説 (Brennan & Buchanan)
政府は税収最大化を目的とする→政府が競争圧力に服するほど、国民を搾取するのがむずかしくなる
Local Governments and Economic Freedom: A Test of the Leviathan Hypothesis
リヴァイアサンに楔を!② 課税権の制限
地方が企業を誘致するための減税競争。底辺への競争。
地方財政論 第10回
地方財政論 第12回
底辺への競争 - Wikipedia
政府は公共の利益のために行動 (し、成功) するという仮定のもとでは、住民獲得競争による減税合戦は社会厚生を損なう。
一方、Brenann & Buchanan のリヴァイアサン仮説によれば、政府アクターは社会的に望ましいか否かに関わらず税金をできるだけ取ろうとするのであり、減税圧力が生じることは (企業が価格競争をするのが消費者にとって望ましいように) 社会的に好ましいかもしれない。
政府の行動モデルについての仮定だけでなく、どのような状態を社会的に望ましいとするかの基準かにもよるでしょう。仮に不効率な政府でも格差是正があることを重視するなら、巨大な地理領域を支配する福祉国家のほうが、分権的なシステムより好ましいかもしれないし、徴税はそれが悪い社会的結果を持つかどうかに関わらず不正とする自然権論的リバタリアンの観点からすれば、もちろん減税圧力が生じることは好ましい、というように。
さて、第三章の租税競争については少し不満が残る。ここでは国際的に主流の見解(ZMWモデルとその発展理論[*3])を反映して「下限への競争」といって有害な政府間競争として紹介される。しかし、公共選択論ではブレナン=ブキャナン(『公共選択論の租税理論』但し、記事では詳しく触れていない)をはじめとして租税競争を支持する議論は多い[*4]。
紹介『テキストブック公共選択』(1/2)
Zodrow- Miezkowski- Wilson modelによると、政府が企業を獲得するための競争によって公共財の供給量がパレート効率なよりも低くなってしまうらしい。
地域独占
現在でも、水道、電力会社などの地域独占企業は、引っ越しすれば別のより安い会社に変えることができるので、同様のインセンティブに服している。(「私有都市についての3つのエッセイ」by Mark Lutter)
ネオカメラリズムは、自治体が水道を民営化した場合に近いことになる。引っ越ししない限りは独占力を利用して価格を上げることができる。
アメリカの水道が民営のところでも、独占力を乱用しないように価格統制してるはず。
勤務先、通学先などが縛られている場合
賃貸物件は何年住むと得?平均居住期間から引っ越しタイミングを分析 | ヒトグラ
今まで何回引越しをした? 10~50代364人へ引越し回数を調査した | 住まいの本当と今を伝える情報サイト【LIFULL HOME'S PRESS】
やっぱり、Seasteading (海上国家) の、「海の上なら船で建物ごと動かして引っ越しがかんたん」という方がいいのではないか。
パッチワークと似た考え (他の住民獲得競争に基づくシステム構想)
リバタリアン政治哲学者ロバート・ノージックの「メタユートピア」
稲葉 振一郎 "メタ・ユートピアの構図 ロバート・ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』再読"
メタユートピア = 実験的ユートピア社会同士が競争しあう世界
ノージック『アナーキー、国家、ユートピア』の最終章、「ユートピアのためのフレームワーク(枠組み)」
ヤーヴィンはノージックのアナーキー、国家、ユートピアをフォーマリズムに類似する非中央集権的体制としている
Nozick's Anarchy, State, and Utopia is another decentralist view of the world which is quite similar to formalism, although Nozick still regards states as partnerships rather than as property.
Posted by: Mencius on April 23, 2007 1:06 PM http://www.2blowhards.com/archives/2007/04/_trial_version.html
スコット・アレクザンダーの「群島と原子的共同体主義」
Archipelago and Atomic Communitarianism | Slate Star Codex
スコット・アレクザンダーによれば、多数のコミュニティ間で移動可能性、離脱可能性を保証することは、リベラリズムの理念から見て望ましい。
Next Door In Nodrumia | Slate Star Codex
政府とその他のコミュニティの自由の侵害度合いの違いは何か
コミュニティ離脱のコスト、他の選択肢の多さ、新しい共同体を作ることの容易さ/難しさ、コミュニティ形成が血縁・地縁的なものなのか/自発的なものなのか
これは地方自治と自由の関係を考える上で役に立つ。
スペンサー・ヒース
私有コミュニティがガバナンスを提供するスペンサー・ヒース的アナキズム (無政府封建主義)
スペンサー・ヒース『砦、市場、聖餐台』
Types of Anarcho-capitalism
ここではハンス・ハーマン・ホップとスペンサー・ヒースは insular かつ leasehold (個々人が家を所有するのではなくアパートやゲーテッド・コミュニティから借りる) で同じ枠になっている
ゲーテッド・コミュニティ(城壁住宅街)、領土的財
ある財・サーヴィスの消費・利用が、主として一定の地域に限られており、この領土への出入りが管理可能であるとき、この財は領土的財となる。地域への出入りが統制できるからこそ、この財は排除可能性を帯びるようになり、市場による供給が可能となる。
「市場の失敗」論は、しばしば、公共財(と定義される財)の消費から非排除性を仮定するところから出発している。ところが、領土的財に注目すれば、この「市場の失敗論」を論駁することは容易である。というのも、領土的財の供給者は、地域に出入りする者に「入場料」などを要求することができるので、公共財(と定義される財)は実は排除性を有しており、しかも民間企業はその供給から利益を得ることも可能だからである。
(強調は引用者) "城壁住宅街と治安" http://slumlord.hatenablog.com/entry/20100331/1270047646
アスキュー・デイヴィッド「城壁住宅街と治安―リバタリアニズムと治安の保障」
公共財の定義には、排除性だけでなく、競合性もあるけど
市場の失敗論を論駁するのは容易というのは、言い過ぎでは?
映画館とかディズニーランドとかも領土的財?
法や公共サービスといった取引が難しい財も、出入りが管理可能で合意に基づくものであれば、領土的財という課金可能な財にでき、自由な選択、競争ができる
ゲーテッド・コミュニティ:新しいユートピア : Libertarianism Japan Project by slumlord
slumlord "書評:集合住宅デモクラシー | Libertarian Forum Japan"
ボランタリー・シティ | Libertarian Forum Japan
エドワード・ストリンガムの「垂直的に統合された私有コミュニティ」
無政府資本主義
私有コミュニティから理解するアナルコキャピタリズム:問題は自然権論か帰結主義かということではなく、無政府資本主義かそうでないかということ | アナルコ・キャピタリズム研究(仮)ブログ
私有コミュニティ private community
自由都市・堺 | アナルコ・キャピタリズム研究(仮)ブログ
Bryan Caplan "Anarcho-Capitalism Isn't Crazy, Just Ahead of Its Time"
土地と治安維持機能が付属してる式の無政府資本主義と地理的に小さい最小政府がたくさんある状態は機能的には同じ。
Seasteading - Marginal REVOLUTION / Garett Jones "Would the Private Sector Make You Remove Your Shoes Before Boarding? - Econlib"
Homeowner associationもルールが厳しいところがある。もし自由を大して望まない人が多いなら、競争的政府も需要に合わせて厳しいルールのところが増える可能性がある。システム全体としてはリバタリアンだけど、その中にある自治体は自由ではない。ハンス・ハーマン・ホップの、伝統主義的な生き方に賛同しないと物理的に除去 (physically remove) される共同体など。
ジョセフ・ヒース「リバタリアンと社会保守主義の奇妙な結託:性教育反対運動を巡る社会保守主義のパラドクス」(2015年9月15日) – 経済学101
アナーキー・国家・ユートピア「枠は自由尊重主義的、レッセ・フェール的であるが、その中の個々のコミュニティーがそうである必然性はないし、あるいはその中でどのコミュニティーもそうであることを選ばないかもしれない。」(520頁)
ソース: メタ・ユートピアの構図
Panarchy
Polycentric law - Wikipedia
Seasteading
パトリ・フリードマン: Dynamic Geography: A Blueprint for Efficient Government (2002)
ボートの連合でできた海上国家だと、陸と違って建物の場所を自由に動かせるため、悪い政策から低コストで逃げることができるようになり、政府間の住民獲得競争を激化できる。
太平洋に浮かぶ「人工都市」が、2019年建設開始。 | TABI LABO
Peter Thiel’s plan to become CEO of America | by Samuel Hammond | Niskanen Center | Medium
Seasteading is the same idea as classic feudalism, but on platforms in the ocean. In theory, Lords and CEOs have an incentive to produce relatively good government in order to attract shareholders and vassals. And since what counts as good government may vary, vassals vote with their feet in order to opt into the fief or seastead that most aligns with their values.
Economists call this Tiebout sorting, a model that inspired a generation of libertarians to a kind of municipal fetishism which vastly overestimated the average person’s willingness to move, and vastly underestimated the potential for localized forms of tyranny. And in legal theory, it is called polycentric law, or the devolution of monopolistic statutory law into competing and even overlapping jurisdictions.
While modern city states like Singapore provide some evidence that a benevolent, technocratic dictator can indeed produce a flourishing society along a corporate model, and the success of Hong Kong, and special economic zones like Shenzhen and Xiamen, show experiments in legal devolution have a lot of merit, this risks a kind of sharpshooters fallacy. Namely, it highlights the successes while ignoring the many failed states and other experiments in less-than-benevolent dictators, as well the hidden centralism underwriting successful, non-anarchic implementations of legal devolution. More quantitative approaches, in contrast, continue to find democracy has a “robust and sizable” pro-growth effect.
Balaji Srinivasan の Network State
Balaji Srinivasan "The Network State"
Laboratories of democracy - Wikipedia
民主主義の実験場。地方分権によって、他の州にリスクを晒すことなく、新しいアイデアを試せるという考え。ヤーヴィンのパッチワークの場合は、"君主制主義の実験場 (laboratories of monarchy)" と言えるだろう。
Much of the world's territory has been carved up into sovereign enclaves, each run by its own big business franchise (such as "Mr. Lee's Greater Hong Kong", or the corporatized American Mafia), or various residential burbclaves — quasi-sovereign gated communities.
ほとんどの世界の領土は主権を持った包領に細切れにされ、それぞれは巨大ビジネスのフランチャイズ(Mr.リーの大香港、会社化されたアメリカン・マフィア) によって運営されているか、居住用の郊外居住地 (擬主権的ゲーテッド・コミュニティ)になっている。
Snow Crash - Wikipedia
Unenumerated: Microkernel government
マフィア。軍閥。群雄割拠。
ディズニーランド。
What is Patchwork? : r/Patchwork
Vincent Ostrom - Wikipedia
足による投票 - Wikipedia
荒木優太(新しい本がでたよ)
@arishima_takeo
アナキズムを村社会の同調圧力への追認とみるのは、間違っている。というのも、クロポトキンなど明瞭に書いているが、中央政府に代替されるコミュニティは複数群生しており、個人は嫌ならば出て行くという選択可能性・移動可能性を確保しているからだ。
https://twitter.com/arishima_takeo/status/1706971852600725732
Wikipedia: フォーラム・ショッピング 法廷の非健全な競争の例
ex ante legal competition
ex post legal competition
アナルコ・キャピタリズムの芽 - 若年寄の遺言
Exit vs. Voice: アルバート・ハーシュマン
アルバート・ハーシュマンは『離脱・発言・忠誠』(未読)で、組織の関係者が取る行動として、発言を通じて影響を及ぼす発言(voice)と、嫌な組織から離脱する、そしてみんなが嫌な所をやめていいところに行こうとした結果 競争が働く(exit)という2つの方法があり、前者を主に政治学的、後者を主に経済学的と考えた
しかし一方でハーシュマンは、営利組織でも発言を通して影響を及ぼせる政治学的な側面を持っていること (そしてそのことは組織の改善において必要な役割を持っていること) を指摘したらしい。
それと逆に、カーティス・ヤーヴィンは国家という政治的組織にも離脱を通して改善していく経済的な仕組みを働かせたい、という感じかな。(ヤーヴィンはハーシュマンは読んでいないとのことだけど: )
…
I have not read Hirschman, but I am pretty sure I know what I think of it, because I don't regard either "Voice" or "Loyalty" as particularly effective engineering principles even in nonsovereign corporations. Building a sovereign state on them is like building a suspension bridge out of saltwater taffy. My impression is that Hirschman has a case of the democracy bug.
…
Posted by: Mencius on April 23, 2007 9:04 PM
2blowhards.com: The Mencius Vision
株主総会もVoiceだけど
Exit, Voice, and Empire | Otium
政治単位を細かく分割したさいのデファクトスタンダードの乱立の問題
政治単位が細かいと、フィートvs.メートルのようなものを統一するのが難しくなるだろう
タイラー・コーエン 「アルバート・ハーシュマンの経済学」(2006年8月15日) — 経済学101
Exit, Voice
八田 真行 "「発言」の価値:ハーシュマン再訪* ―経営学輪講 Hirschman (1970)―"
どのように現状からパッチワーク社会にいたるか
ヤーヴィンは都市国家が住民獲得競争しあうシステムへの移行を考えているのだが、どうやってそんな移行ができるかについては現実的な回答を持っていないように思える。
大きな領土を持つ会社から始めてもスピンオフして小さく分割できるというようなことを言ってるけど、独占に利益があるのにわざわざそんなことをするか?
暴力の自然独占
そういう意味では、『企業としての国家: 政治的発展における経済的な効力』. By Richard D. Auster and Morris Silverの方が、政府に住民獲得競争をさせるためのもっと可能性のありそうな提案をしている。
住居選択に必要な情報の問題
住民獲得競争において、選択する上では、各地域を比較するための情報が必要になるけれども、その情報はどうやって得るのか
普通の企業より権力が強い。それを利用し、住民獲得競争において不利になる情報が検閲されたら?
たぶん、フランチャイズのようなものができて、ブランド化するだろう。
たとえば比較サイトみたいなのがあったときに、それが買収されて役に立たなくならないという保証はあるか
それは普通の比較サイトでも一緒な気がする
安全保障の問題
ヤーヴィンは、
もし各アクターが合理的なら、攻撃的行動をしたアクターが損するようにインセンティブ設計するのは簡単だろう
そして、主権株式会社は利潤を追求する合理的主体なのだから、パッチワーク社会において平和を維持するのは簡単だろう
と言っている。
ソース: Chapter 4: A Reactionary Theory of World Peace | Patchwork: A Political System for the 21st Century | Unqualified Reservations by Mencius Moldbug
しかし、安全保障のジレンマなどは、各アクターが合理的だとしても生じうる。
安全保障のジレンマ - Wikipedia
さらに、そのようなインセンティブ設計を誰がするのかはよくわからない。国連のような組織は考えていないようだから。
主権を持つ単位を地理的に細かくすると、軍拡競争を考慮すると、全体としての軍事支出が大きくなると考えられる。これはヤーヴィンが省庁間の予算獲得競争で政府介入が増えると言っているのと同じ構造な気がするので、無視できることではなさそう。
Joseph Heath "Rawls on Global Distributional Justice: Defense"によると: どんな国も領土内部で軍拡競争が起こることはない一方、エチオピアが独立したあと、今までは地域でしかなかったエリトリアは領土問題から25%の軍事支出を行うようになり、エチオピアは軍事支出を10%までに増やした。
軍拡競争によるコストと、住民獲得競争が起こることによる人々の利益を総合して、最適な国家サイズを計算できるか?(参照. ロナルド・コースによる会社の最適なサイズ論)
パッチワークによる地理的な政治単位の分割と、三権分立や省庁の独立性のような政府内部の分割のうち、ヤーヴィンは前者を強く肯定する一方で、後者には激しく反対するけれども、結局2つの種類の分割にそこまで違いがあるわけじゃないんじゃないのっていう
独立して決定すると、全体として最適でない行動をする場合がある、っていう。
普通のリバタリアン/古典的自由主義者は両方の種類の権力の分立を肯定するわけだし
細かい主権単位の場合と、アナーキーの場合というのはよく似ていて、アナーキーの場合に戦いが避けられないなら、パッチワークでも戦いは避けられないのでは
これは国際社会はアナーキーという話に近い
中国の春秋戦国時代では、色々な権力が地方にある状態から、争いの世になってしまった。
また、中世イタリアの諸都市は結局攻め込まれてしまった気がする。
大きな人口を持つほうが、徴税可能なGDPが大きくなり、軍事力としては大きくなる。
たとえば、1人あたりGDPで見て豊かなオランダやシンガポールは国際情勢において存在感を持たないのに対し、1人あたりのGDPで見れば小さいが国土や人口は大きい中国やロシアが軍事力によって国際的に存在感を持つ。
そのため、住民獲得競争によるサービス向上という観点からは、住民の観点から好ましい都市国家も、軍事的には大国に圧倒されてしまうかもしれない。
私有コミュニティ
Edward Stringham (2006) "Overlapping Jurisdictions, Proprietary Communities, and Competition in the Realm of Law"
概要: Frey(2001) 他は、複数の政府を1つの領域内で競争させるという提案をしているが、古典的自由主義者〔ここではおそらく無政府資本主義者ではないリバタリアンのこと〕は法執行者間での競争は上手くいかないと議論している。この論文では、市場に基づく一方で、1つの領域に対し1つの法執行主体のみが居て、その所有者が利潤追求のためその財産を警備するという混合的なシステムについて記述する。
客を獲得したい垂直的に統合された私有コミュニティは、そのパトロンが望む形で彼らの財産を警備する必要がある。
暴力の独占はあるけれど、不動産所有者と法執行主体が結びつくことで、法執行者が残余請求者になるため、その顧客を搾取しないインセンティブを与えることができる。
FREY [200 I] and others propose subjecting governments to competition within their jurisdiction, but classical liberals argue that having competing law enforcers cannot work. This article describes a hybrid system that relies on markets but has one law enforcement agency per region, with profit motivated proprietors policing their properties. Vertically integrated proprietary communities wishing to attract customers would need to police their property in a way that patrons desire. Al- though a monopoly on the use of force would exist, bundling law with real estate makes the law enforcer the residual claimant and creates incentives for them to not to expropriate their clientele. (JEL: D 740, H 100. K 400, L 330) (強調は引用者)
ヤーヴィン以前に提起された、ネオカメラリズム的なアイデア。
私有コミュニティでは、住人と統治者の関係が契約に基づくものになる。社会契約とかそういうフィクションじゃなく、がちの契約。
ベルリンの壁のようなものを作って搾取しようとしても、その所有者が連続的につながってない飛び地を所有している場合、1つのところで信頼を失うと別のところの信頼も失われ、みんな逃げてくということになる。
フランチャイズとかもできそう。
McGovern
Stringhamによると、土地に警備がくっついているのは、OSとアプリの関係のようなもの。
OSを一旦買うと、他のOSに移るコストが高いとすればアプリの値段をかなり上げてもいいように思えるが、実際にはコミットメントメカニズムを使うことでそうなってないようだ。
Stringhamは、連邦政府が国防のみをし、地方警察は民営にして土地所有者が契約するというのでもいいとしてる。
Arnold Kling "Mencius Moldbug, Sighted but Uncited", EconLogの記事でArnold Klingが紹介。
コメント欄には、ヤーヴィン (Mencius) も出現。
エドワード・ストリンガムは、所有者による治安維持などの提供の例としてディズニーランドや、ラスベガスのカジノの私的警察を挙げている。
無政府資本主義と私有コミュニティ
無政府資本主義は、武装警備会社と個人が契約し、防衛してもらうという政治経済システムが代表例。
上記文献によると、無政府資本主義においては、武装警備会社同士の抗争が起こるか、もしくは起きないならそれを止めているのとまさに同じ手段によってカルテルや吸収・合併による独占が起こってしまうかも、という問題がある。無政府資本主義の場合よりもややマシになったもののパッチワークにもこの問題は存在するのではないか。
つまり都市間の抗争を避けるために国連のような組織を作ってしまうと、それは住民に対しカルテルとして振る舞い、住民獲得競争の圧を弱めるためにも使えてしまう。
〔タイラー・コーエンによれば〕 つまり、もし保護エージェンシーが紛争解決のために協力することができるなら、同様のメカニズムはそののま共謀するための協力行動を可能にする。(強調は引用者)
"公共財としての法:アナーキーの経済学" (リンク切れ)
共謀というのはカルテルや吸収合併
Cowen, Tyler 1992, "Law as a Public Good: The Economics of Anarchy,"
この問題にはStringham (2006)も言及してた。警備会社の場合よりも、そういう協調の必要性が少なく、またあるところで協調する (生産物を標準化する) からといって別のところで協調できる (カルテル) とは限らないので、必ずしも問題ではない、と。
標準化は協力問題じゃなくてコーディネーション問題だから違うんじゃない??
また、現在の国際社会も世界政府がない以上は同じようなものである。
slumlord 国際社会とアナーキー | Libertarian Forum Japan
Stringhamの文献より:
https://gyazo.com/ef08adb0944a574ba56c8eddb188334e
table: 法律の執行における3つの主要なアプローチ
政府による独占的な法執行 司法管轄が地理的に重なった法執行 私有コミュニティによる法執行
利益のための法執行が許されてる? no yes yes
執行者-原告関係が契約に基づく? no yes yes
執行者-被告関係が契約に基づく? no 必ずしもそうではない yes
非契約的法執行主体の数 1 (国は196個あるのではw) 制限なし 0
契約的法執行主体の数 1 制限なし 制限なし
法執行者は領域の残余請求者か no 〔ほんと?〕 no yes
実例 現代の政府 「中世アイスランド、 「ラスベガスの民間警察、
19世紀のアメリカのピンカートン、 ディズニーランド、
現代アメリカの賞金稼ぎ」 大学のキャンパス」
図:Edward Stringham (2006) "Overlapping Jurisdictions, Proprietary Communities, and Competition in the Realm of Law"より引用(p. 523)
※「司法管轄が地理的に重なった法執行」 = 無政府資本主義
Edward Stringham(2006)に対する、Peter Leesonのコメント
New Paper on Anarchy, etc. - Coordination Problem
Peter Leeson "Anarchy, Monopoly, and Predation"
抜粋・訳:ゲーム理論の「フォーク定理」は、将来のビジネスをダメにできるシステム〔訳注: 無限繰り返しゲームなど〕が政府抜きで協力を維持できる可能性〔訳注: しっぺ返し戦略を参照〕を示している。この定理に根ざした制度によって個々のプレイヤー自身で施行される秩序 (self-enforced law) ができて、交易(協力)が維持できるようになる場合は色々とあるが、この協力を生み出す可能性は無制限というわけではない。特に、あるエージェントが他のエージェントより物理的に強いと、フォーク定理は機能しなくなってしまうことがある。Stringham(2006)の垂直的に統合された所有権コミュニティは、オーナーが居住者から収奪しないためにフォーク定理に頼っている。これは革新的ではあるけど、うまくいかないということを示そう。独占的オーナーは自発的契約を破って、居住者(借地人)から任意に強奪して、利潤を最大化できてしまう。
収奪自体は税の一種 (税率の変更) と解釈できるけど、約束通りでない形でできちゃう (約束を守るインセンティブがない) のが良くない?
離脱の自由がどうにかして確保できないとうまくいかないのかも
ピーター・リーソン『海賊の経済学』で、誰かに所有されている普通の船よりも、奪ったものであり所有者が存在しない、民主主義を発達させた海賊船の方が船員の待遇が良かったと言っている
無政府資本主義文献
David Friedman "Law as a Private Good: A Response to Tyler Cowen on the Economics of Anarchy"
David D. Friedman "私的財としての法(翻訳)"
Tyler Cowen "REJOINDER TO DAVID FRIEDMAN ON THE ECONOMICS OF ANARCHY"
Networks, Law, and the Paradox of Cooperation by Bryan Caplan, Edward Peter Stringham :: SSRN
蔵 研也 『無政府社会と法の進化 ――アナルコ・キャピタリズムの是非』
アナルコ・キャピタリズム研究(仮)ブログ
デイヴィッド・フリードマン "資本主義トラックの利点"
デイヴィッド・フリードマン "私的財としての法(翻訳)"
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