造語はあたかも小説の登場人物のようなもの
造語は、特定の命題によって構成されるものではなく、「そういうものってあるよね」と語られるものである。 「アレクセイ・カラマーゾフっているじゃないですか」というような仕方で、造語は導入される。
造語は物語の序盤に、いきなり出てくる。そして、造語がいくつかの働きをなすのを見届けるうちに、私たちはその造語が何ものであるかを知ってゆく。
……あるひとつのものが何であるかを知らないとしたら、それがどのような性質のものかということを、どうしてぼくは知ることができよう。それとも君には、メノンとは何ものであるかをぜんぜん知らない人が、メノンは美しいか、金持ちであるか、高貴な人物であるか、あるいはまたそういった性質と反対の人物であるか、というようなことを知ることができると思えるかね。(プラトン『メノン』岩波文庫p. 11) 造語を知るとは、メノンが何ものであるかを知ることに近い。
思考実験